2011年6月の景気動向調査
景気DIは33.2、前月比1.8ポイント増と2カ月連続で改善
< 2011年6月の動向 : 回復基調を取り戻し始める >
2011年6月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比1.8ポイント増の33.2となり、2カ月連続で改善した。
東日本では生産設備の復旧が進んでおり、サプライチェーンの回復にともなって全国的に企業の生産活動は回復傾向が鮮明となり始めている。原材料価格の高騰や円高などは続いたものの、大手企業を中心に収益の改善もみられた。
しかし、消費活動では生活必需品が底堅かったものの、特需がみられた家電関連以外では総じて停滞が続いた。震災も影響して所得や雇用環境の低迷が長期化しており、政策の不透明感も強まったことで、供給面に比べて需要面で回復の遅れが目立っている。景気DIは震災前(35.4:2011年2月)を下回る水準が続いており、前月からの改善は復興の端緒に過ぎない。
国内景気は回復基調を取り戻し始めているものの、内需は不安定で、依然として弱含みの状況にある。
・企業の生産活動は復調が続き、『製造』が国内景気の回復をけん引
企業の生産や出荷、設備稼働率などは復調が続いた。サプライチェーンも急速に回復し始めたことで、自動車関連製造の改善幅(8.6ポイント)が全51業種中で最大となるなど生産活動の改善は顕著で、『製造』は国内景気の回復をけん引した。
・家計の生活防衛意識に拍車がかかったことで、消費の回復はまだらで不安定
一方、個人消費は停滞が続いた。節電や省エネ、地上デジタル放送切り替え前の需要増などで「家電・情報機器小売」が大きく改善したものの、『小売』全体の改善は1.3ポイントにとどまった。衣料品や家具などは悪化し、改善した他業種でも『製造』に比べて改善幅は小さく水準も低い。『サービス』でも旅館・ホテルの低迷が続いた。
福島第一原発事故の長期化や今夏の電力不足のほか、所得や雇用の低迷、政局の混乱なども先行き不安を増幅させた。家計の生活防衛意識には拍車がかかっており、消費の回復はまだらで不安定な状況にある。
< 今後の見通し : 緩やかな回復 >
生産設備やサプライチェーンの回復により、企業活動は今後も着実な回復が見込まれる。省エネ製品やサービスなどの需要増も関連企業の収益改善に寄与する。アジアを中心とした経済成長の持続も、国内景気の回復をけん引していくものとみられる。
しかし、電力不足が全国的な問題として長期化する恐れもあり、税制や貿易、エネルギー政策などとあわせて企業活動への影響が危惧される。また、震災による消費マインドの低迷は払拭されておらず、今後の政策見通しも不透明ななかで生活不安の増大が懸念される。さらに、生活必需品などの値上がりが続くことで家計ではいっそうの負担増も懸念され、内需は明るい展望を描きにくい状況にある。
景気予測DIは「1カ月後」(35.2、当月比2.0ポイント増)、「3カ月後」(36.2、同3.0ポイント増)、「6カ月後」(36.0、同2.8ポイント増)となった。
国内景気は緩やかな回復基調が見込まれるが、需要不足の長期化で回復ペースは鈍化する可能性もある。