2011年7月の景気動向調査
景気DIは35.5、3カ月連続で改善し震災前の水準を回復
< 2011年7月の動向 : 回復局面 >
2011年7月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比2.3ポイント増の35.5となった。3カ月連続で改善し、5カ月ぶりに震災前(2011年2月:35.4)の水準を回復した。
震災から4カ月が経過し、サプライチェーンの復旧が進んだことで企業の生産活動は回復傾向が鮮明となった。特に、復興へ向けたインフラ整備や生産設備の新設・復旧などで投資も活発化し、被災地を中心に東日本の復調が続いている。
また、消費マインドは震災のショックから徐々に回復しつつあり、月前半の猛暑や節電・省エネ対策、地デジ切り替えなどの特需が内需の底上げにつながった。しかし、原発事故の長期化や家計における負担増の懸念、食の安全への不信感の増幅などはさらなる改善の重しとなっている。
国内景気は震災から着実に回復しているものの、内需に自律的な力強さはみられない。
・企業の生産活動は回復傾向が鮮明となり、『製造』が国内景気の回復をけん引
自動車関連の製造業種が直近の3カ月間で19.7ポイント(当月は9.5ポイント)改善するなど企業の生産や出荷、設備稼働率などは回復傾向が鮮明となった。復興需要も増大しており、「宮城」は全国第2位となり、「福島」も第7位に上昇した。
・猛暑や省エネ・地デジ特需などが消費を底上げするも、自律的な力強さはみられず
例年に比べて梅雨明けが早く、月前半は猛暑により飲料や夏物衣料などが需要増となった。また、地上デジタル放送切り替え(7月24日正午)による特需や節電・省エネ製品の需要増で「家電・情報機器小売」や「医薬品・日用雑貨品小売」なども比較的高水準となった。「旅館・ホテル」も需要期に入って客足が戻り始めている。
しかし、放射性セシウムに汚染された疑いのある牛肉が全国の市場に流通するなど原発事故による影響は長期化しており、人々の食や健康に対する防衛意識は一段と高まっている。雇用不安は根強く政局も混迷するなかで、内需に自律的な力強さはみられない。
< 今後の見通し : 緩やかな回復局面 >
中国などアジアを中心とした外需は堅調で、国内でも法人、個人ともに節電や省エネ意識が一段と高まるなかで、今後も新商品やサービスなどの需要増が見込まれる。家電エコポイント制度の新しい枠組みによる復活案が検討されるなど、政策的な後押しも内需の底上げに寄与することで、企業の収益改善につながることが期待される。
ただ、震災復興や財政再建へ向けたコスト負担の増加は避けられない。円高や国内のエネルギー政策の不透明感もあり、企業の収益力低下や海外シフトの加速も懸念される。今後も所得や雇用に早期の改善は期待できず、原発事故の長期化や生活必需品などの値上がり傾向も、内需の回復を妨げる要因となる。
景気予測DIは「1カ月後」(37.2、当月比1.7ポイント増)、「3カ月後」(37.9、同2.4ポイント増)、「6カ月後」(36.8、同1.3ポイント増)となった。
国内景気は緩やかな回復基調が見込まれるが、内需の停滞によって、回復ペースは鈍化する可能性もある。