2011年8月の景気動向調査
景気DIは35.2、前月比0.3ポイント減と4カ月ぶりに悪化
< 2011年8月の動向 : 回復局面 >
2011年8月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比0.3ポイント減の35.2となり、4カ月ぶりに悪化した。
震災から5カ月が経過し、企業の生産設備やサプライチェーンの復旧は進んだものの、今夏の節電の影響に加えて、円が戦後最高値を更新するなど日本の輸出環境が厳しさを増したことで、企業活動は停滞した。
しかし、復興需要の増加により被災地を中心とした東北の改善基調が続いている。また、月前半の猛暑により節電製品などの需要増が続き、円高による輸入品価格低下などのメリットもみられた。ただ、個人消費の回復にはこれらの効果は限定的で、景気DIは4カ月ぶりの悪化を余儀なくされた。
国内景気は輸出環境の悪化と内需の伸び悩みにより、震災後の回復局面に早くも変調が表れ始めている。
・輸出環境の悪化で企業の生産や出荷が停滞、個人消費も伸び悩む
今夏の節電が企業活動に悪影響を与えたほか、ニューヨーク外国為替市場で円が一時、1ドル=75円93銭と戦後最高値を更新するなど、輸出環境は厳しさを増した。震災後の生産回復、増産の動きが鈍り、『製造』は4カ月ぶりに悪化した。
また、原発事故の長期化が消費マインド回復の妨げとなっている。欧米の財政不安が強く意識されたことで、医療・年金をはじめ国内の財政問題が再認識され、所得・雇用環境の低迷、不透明な政局も回復の重しとなった。節電や省エネ対策製品の需要増、生活必需品にも底堅さはみられたが、『小売』の改善幅は大きく縮小した。
・復興需要により『東北』が過去最高の第2位、県別でも「宮城」などの被災県が上位に
しかし、復興需要の増加は顕著で、『東北』は全国10地域中で過去最高の第2位に上昇した。なかでも「宮城」が47都道府県別で2カ月ぶりに第1位となったほか、「福島」(第4位)、「岩手」(第5位)も過去最高の順位となった。
< 今後の見通し : 踊り場局面に入る可能性 >
欧米経済は不透明感が漂っているが、中国やインドなどの新興国経済は比較的堅調な推移が見込まれる。内需は弱いものの、節電や省エネ意識が定着するなかで、新商品・サービスを創出する動きも活発化しており、これらが家計の消費喚起や企業の収益底上げにつながることが期待される。また、野田新内閣による復興政策や新たな景気刺激策にも期待がかかる。
しかし、円高基調からの短期的な反転は期待薄である。需要不足のなか、エネルギーや環境、貿易問題なども山積しており、企業の海外シフトの加速、産業空洞化の懸念が高まっている。震災復興や財政再建に向けた負担増も避けられないものとみられる。
景気予測DIは「1カ月後」(35.0、当月比0.2ポイント減)、「3カ月後」(34.8、同0.4ポイント減)、「6カ月後」(34.5、同0.7ポイント減)となった。
国内景気は踊り場局面に入る可能性があり、国際競争力の低下が長期化すれば一段の下振れも懸念される。