2011年9月の景気動向調査
景気DIは35.5、前月比0.3ポイント増と2カ月ぶりに改善
< 2011年9月の動向 : 回復局面 >
2011年9月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比0.3ポイント増の35.5となり、2カ月ぶりに改善した。
震災から半年が経過し、自動車関連をはじめとして企業の生産活動は緩やかな復調を続けた。復興需要も増加してきたことで、『東北』が調査開始以来、初めて全国第1位に上昇するなど被災地域では改善傾向が顕著となっている。
しかし、欧米景気の減速とそれによる円高の定着で輸出環境は厳しさが続いた。個人消費も脆弱なことから、震災後の生産回復、増産への動きは鈍っており、物流にもやや停滞感がみられる。増大の続く復興需要も、景気全体を底上げするには至ってない。
国内景気は緩やかな回復基調を維持しているものの、輸出環境の悪化と内需の停滞で回復力が弱まっている。
・復興需要により『東北』が初の全国第1位、県別でも「宮城」が第1位、「福島」が第3位
復興需要の増加が続いており、『東北』は全国10地域中で初めて第1位に上昇した。なかでも「宮城」は域内の『建設』や『製造』などの改善が著しく、47都道府県別で2カ月連続で第1位となったほか、「福島」も過去最高の第3位となった。
・輸出環境の悪化で企業の生産や出荷の回復が伸び悩む、内需も停滞
こうしたなか、円は1ドル=76円台で定着し、対ユーロも東京外国為替市場で一時1ユーロ=101円98銭と最高値を更新するなど、円高傾向が続いた。また、原発事故の長期化や所得・雇用環境の低迷だけでなく、各地で相次いだ台風による豪雨災害、世界的な食糧価格の高騰や国内の税制改正見通しなどで今後の家計への負担増も意識され始めたことから、消費マインドは弱含んだ。
輸出環境の悪化や内需の停滞、8月の節電・省エネ関連需要の反動減もみられたことで、『製造』の改善は小幅にとどまり、『小売』は6カ月ぶりに悪化して他業界に比べてその悪化幅が目立った。
< 今後の見通し : 踊り場局面に入る可能性 >
国内では復興需要の拡大が見込まれる。また、節電や省エネ意識の定着が人々の新しい生活スタイルを生みだすなかで、新商品やサービスを創出する動きは続いており、これらが家計の消費喚起や企業の収益底上げにつながることが期待される。
しかし、欧米の景気動向は不透明であり、国内では円高やエネルギー・貿易問題などによる国際競争力の低下と産業空洞化の進行が懸念される。雇用不安の増幅は避けられず、復興や財政再建に向けて企業、家計ともに今後の負担増が必至とみられるなか、個人消費や設備投資活動の力強い回復も期待できない。
景気予測DIは「1カ月後」(35.8、当月比0.3ポイント増)、「3カ月後」(35.3、同0.2ポイント減)、「6カ月後」(36.6、同1.1ポイント増)となった。
国内景気は一部で復興需要がけん引するものの、内需の回復力低下や外需の弱含みによって、踊り場局面に入る可能性がある。