2011年10月の景気動向調査
景気DIは36.1、2カ月連続で改善し、国内景気は回復基調を持続
< 2011年10月の動向 : 回復局面 >
2011年10月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比0.6ポイント増の36.1となり、2カ月連続で改善した。
企業の生産活動は緩やかな回復が続き、個人消費も生活必需品や秋冬物需要などが比較的堅調であった。また、復興需要によって『東北』は全国10地域中、2カ月連続で第1位となるなど被災地域の改善が続いた。
しかし、円高の進行により輸出環境は厳しさを増し、タイの洪水被害による生産活動への悪影響も加わったことで、『製造』の改善は小幅にとどまった。『小売』や『サービス』も改善はまだらで全体の持続的な底上げには至らなかった。
国内景気は回復基調を維持しているが、復興需要のほかに積極的な押し上げ材料はなく、力強さに欠ける局面が続いている。
・復興需要により『東北』が2カ月連続で第1位、県別でも「宮城」が第1位、「福島」が第4位
復興需要の増加で『東北』は全国10地域中、2カ月連続で第1位となった。なかでも「宮城」は域内の『建設』や『製造』などの改善が他地域に比べて際立っており、47都道府県別で3カ月連続の第1位となり、「福島」も第4位となった。
・円高やタイの洪水被害などで、生産活動の回復は緩やかなものにとどまる
しかし、欧米の不安定な景気動向と円高の進行(1ドル=75円32銭と戦後最高値を更新)、タイの洪水被害により生産設備や部品の供給に悪影響が及んだことなどで、『製造』は前月比0.3ポイントの改善にとどまった。
・積極的な押し上げ材料はなく、内需全体の持続的な底上げに至らず
前月は『小売』が台風による豪雨被害などで悪化したのとは対照的に、当月は生活必需品関連需要や秋冬物の季節需要などで比較的底堅さがみられた。ただ、『小売』および『サービス』全24業種は一進一退のなかで10業種が悪化するなど、内需全体が持続的に底上げされるほどの回復力はみられなかった。
< 今後の見通し : 踊り場局面に入る可能性も >
復興需要の増大が続くほか、住宅エコポイントの再開や住宅金融支援機構における金利引き下げ幅再拡充など、政府では追加の政策支援が検討されている。また、震災により抑制されてきた消費マインドも徐々に和らいでいくことが期待される。
しかし、歴史的な円高水準が早期に是正される見込みは薄く、輸出競争力の低下による事業の縮小や海外シフトの加速、雇用・所得環境の悪化などが懸念される。エネルギーの安定供給や貿易問題の進展に向けた道筋も不透明ななかで、復興や財政再建のための負担増は家計や企業に重くのしかかっていくとみられる。
景気予測DIは「1カ月後」(37.0、当月比0.9ポイント増)、「3カ月後」(36.4、同0.3ポイント増)、「6カ月後」(38.1、同2.0ポイント増)となった。
復興需要や新たな景気刺激策による底上げ効果は限定的であり、国内景気は内外需とも閉塞感が拭えず、踊り場局面に入る可能性もある。