2012年5月の景気動向調査
景気DIは38.2、前月比0.3ポイント減と6カ月ぶりに悪化
< 2012年5月の動向 : 回復は頭打ち >
2012年5月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比0.3ポイント減の38.2となり、6カ月ぶりに悪化した。
政策支援に加えて、夏に向けた季節需要の増加により内需は緩やかな復調を維持した。しかし、家計の生活防衛意識の高止まりによって、個人消費の回復力は弱く、原材料価格の上昇や再び厳しい円高水準に戻ったことなどが影響して、企業の生産活動も低下を余儀なくされた。
復興需要も一部の被災地域を下支えはしているものの、他地域や業界を幅広く底上げするほどのけん引役とはなっていない。
国内景気は政策頼みの状況から脱しておらず、回復は頭打ちとなっている。
・企業の収益性は改善進まず、『製造』は2カ月連続で悪化
原材料価格の上昇に加えて、為替が再び1ドル=79円前後となるなど企業の収益性は厳しさが続いた。政策支援によって「輸送用機械・器具製造」は比較的好調であったものの、全体としては生産活動が低下した。『製造』は『小売』などに比べて回復の足取りが重く、2カ月連続で悪化して震災前に近い水準での推移が続いた。
・復興需要の増加は続いたものの、『東北』が1年1カ月ぶりに悪化
『東北』は復興需要があるなかでも『建設』や『小売』の改善が一服し、1年1カ月ぶりに悪化した。ただ、9カ月連続で全国第1位となり、県別では「宮城」などの被災県が上位を占めた。一方、被災地域外は停滞が続き、『近畿』以西はいずれも全体を下回った。
・内需は緩やかな復調を維持し、『小売』は6カ月連続で改善
「繊維・繊維製品・服飾品小売」や「家電・情報機器小売」は涼感衣料や節電対策などの需要増によって改善したが、これまで改善基調にあった「飲食料品小売」や「医薬品・日用雑貨品小売」、「各種商品小売」など生活必需品関連の業種は悪化した。『小売』は6カ月連続で改善したものの、改善は小幅にとどまった。
< 今後の見通し : 踊り場局面に入る可能性も >
今後も、被災地域を中心に復興需要の増加が見込まれる。また、政策支援でも住宅関連では長期的な需要の底上げにつながることが期待されるが、自動車ではエコカー補助金が夏にも予算切れとなる見込みで、その後の反動減が懸念される。
夏季には電力不足が消費者の購買行動に変化を与える可能性があり、企業の生産や販売活動などへの悪影響も懸念される。政策面ではエネルギーや消費税率の引き上げなど政策課題は山積みで、政局も不安定である。先行き不透明感は拭えず、個人消費や企業の雇用、設備投資なども大幅な伸びは期待できない。
景気予測DIは「1カ月後」(38.8、当月比0.6ポイント増)、「3カ月後」(39.7、同1.5ポイント増)、「6カ月後」(39.8、同1.6ポイント増)となった。
国内景気は内需を中心にかろうじて復調を維持するとみられるが、自律回復に移行する力強さはなく、踊り場局面に入る可能性もある。