2012年10月の景気動向調査
景気DIは35.5、前月比1.3ポイント減と3カ月連続で悪化
< 2012年10月の動向 : 後退局面入りの兆し >
2012年10月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比1.3ポイント減の35.5となり、3カ月連続で悪化した。
復興需要の効果が限られた地域で現れた『建設』は5カ月連続で改善したものの、『製造』『小売』『運輸・倉庫』などでは長引く円高や日中関係の悪化などが影響するなど、全51業種中44業種が悪化した。また、全国10地域中9地域が悪化し、全体として2011年8月(35.2)以来14カ月ぶりの低い水準となった。
海外経済の低迷や日中関係の悪化などで外需は弱く、企業の生産や個人消費、復興需要など内需も力強さに欠けるなかで、
国内景気は後退局面入りの兆しが現れている。
・円高や海外景気低迷に日中関係の悪化も加わり、『製造』は17カ月ぶりの低水準
『製造』は円高や原油・資源高、飼料価格の高騰などによるコスト上昇などで企業の収益環境が悪化していたほか、内需が弱いなかで海外景気の低迷や日中関係の悪化なども重なり生産や出荷活動に回復がみられず、3カ月連続で悪化した。『製造』は全12業種中11業種で悪化し、調査開始以来、初めて10業界中で最も低い水準となった。
・自動車関連、家電・情報機器関連の低迷もあり、『小売』は3カ月連続で悪化
国民負担の増加や消費マインドの伸び悩みのなか、エコカー補助金終了の影響が続く「自動車・同部品小売」や市場における需給のミスマッチが生じている「家電・情報機器小売」など、9業種中8業種が悪化した『小売』は3カ月連続の悪化となった。
・全国10地域中9地域が悪化
10地域中、『北海道』を除く9地域が悪化した。『東海』は欧米景気の停滞や長引く円高、日中関係の悪化などにより域内の『製造』が2カ月連続で悪化するなど、10業界中9業界が悪化したことで、16カ月ぶりに全国を下回った。また、復興需要はみられたものの、長期化する原発事故の影響やマインドの悪化もあり『東北』は3カ月連続で悪化した。
今後の見通し : 後退局面入りの可能性 >
10月30日に日本銀行が 9年半ぶりとなる2カ月連続の追加金融緩和に踏み切り、デフレ脱却への姿勢を明確にしたことは経済全体の下支えが期待される。また、消費税率引き上げで白物家電や住宅などの前倒し需要や復興需要はあるが、プラス材料は少ない。
他方、長期化する円高や原材料高など、国内企業が直面する経営環境の厳しさは続いている。海外経済が減速するなかで欧米経済や新興国向けの輸出減少や生産活動の停滞も懸念される。雇用・所得環境の改善が見込まれないなかでの消費税率引き上げや復興増税などの負担増は徐々に家計の購買力を弱めていくとみられる。また、政策見通しが不透明なことに加えて、日中関係悪化の長期化による経済への悪影響も懸念される。
景気予測DIは「1カ月後」(33.8、当月比1.7ポイント減)、「3カ月後」(32.4、同3.1 ポイント減)、「6カ月後」(33.5、同2.0ポイント減)となった。
国内景気は内外需ともに弱く、後退局面入りする可能性もある。