2012年12月の景気動向調査
景気DIは35.7、前月比0.4ポイント増と5カ月ぶりに改善
< 2012年12月の動向 : 悪化に歯止め >
2012年12月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比0.4ポイント増の35.7となり、5カ月ぶりに改善した。
新政権が発足して金融緩和や景気対策への期待が高まったこともあり、12月28日には為替相場が一時1ドル=86円63銭(東京市場)まで円安が進み、日経平均株価も1万395円と年初来高値で引けた。また、中国における事業も少しずつ再開するなど悪化要因がやや弱まったことで、『製造』や『不動産』など10業界中7業界、51業種中32業種が改善した(前月:24業種)。一方、『建設』は7カ月ぶり、『東北』が2カ月ぶりに悪化するなど、これまでけん引してきた業界や地域で勢いにかげりもみられた。
国内景気は、新政権への期待が高まるなか、悪化に歯止めがかかっている。
・『製造』は9カ月ぶりに改善するも、業種による景気のバラツキも
円高がやや落ち着いていたなかで、震災復興などにより「建材・家具、窯業・土石製品製造」や「鉄鋼・非鉄・鉱業」が改善するなど、『製造』は9カ月ぶりに改善した。ただ、「機械製造」など悪化が続く業種もあり、業界内でバラツキがみられる。
・消費税引き上げ前の駆け込み需要などで『不動産』が5カ月ぶりに改善
単価の下落が続く一方で、被災地域における物件の不足や需給の逼迫で土地購入後の建築着工が遅れているが、潜在需要は強く、消費税増税前の駆け込み需要なども現れはじめており、『不動産』は5カ月ぶりに改善した。
・『南関東』など三大都市圏が8カ月ぶりに揃って改善する一方、『東北』が2カ月ぶりに悪化
『南関東』は、震災の影響で遅れていた工事の着工が増えた『建設』や、円安などによる物流の増加やタクシー減車、貸切バスの規制強化などで過当競争が緩和した『運輸・倉庫』など10業界中8業界が改善した。また『近畿』『東海』を含めて三大都市圏が8カ月ぶりに揃って改善した。『東北』は2カ月ぶりに悪化した。
< 今後の見通し : 期待感先行の懸念 >
新政権による金融緩和政策や大型補正予算などの内需刺激策が景気を下支えし、企業マインドの改善が進むことが期待されるほか、復興需要は継続するとみられる。海外では、米国で財政の崖がひとまず回避され、中国や韓国との関係改善を進めるための動きも外需の取り込みに好材料となる。
他方、株価上昇や円安など資産価格が期待先行で動いているが、実体経済への波及遅れや中小企業金融円滑化法の終了は大きな懸念材料となる。さらに、消費税率引き上げや復興増税など家計負担の増大は個人消費を悪化させる要因になりうる。また、米国や中国・韓国など海外における経済政策の方針が固まっていないこともリスク要因である。
景気予測DIは「1カ月後」(35.5、当月比0.2ポイント減)、「3カ月後」(35.4、同0.3 ポイント減)ともに悪化しており、中小企業の経営者は慎重な見方を崩していない。
国内景気は期待感先行の状況にある。