2003年8月の景気動向調査
景気DIは34.9、7カ月連続して改善
2003年8月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は34.9となり、前月(33.4)より1.5ポイント増加、2003年2月以降7カ月連続の改善となった。改善幅は2003年6月(2.3ポイント)、7月(2.6ポイント)に及ばず、改善の速度は緩やかになっているが、3番目の改善幅であり、足元の景況感は引き続き堅調に回復している。
また、景気の先行きについても、3カ月後が44.4(前月調査時43.3)、6カ月後が45.1(同44.4)、1年後が47.0(同46.2)といずれも5カ月連続で改善した。
ここ数カ月の急ピッチなDI改善は、2003年度第1四半期(4~6月)決算で企業業績がリストラの進展や好調な海外需要に支えられて堅調だったことや、デジカメやDVD、携帯電話、自動車など一部の好調な業界で設備投資を拡大する動きが見られるようになったことによる、景気回復への期待の高まりが背景にある。また、世界的な株高の流れにも乗って株価が戻り基調を強めていることも、マインドの改善につながった。
政府は、こうした国内の状況や年後半の米経済の回復期待を背景に、7月の月例経済報告で景気判断を上方修正し、8月も同様に上方修正する方針を固めた。実際、GDP(国内総生産)や鉱工業生産指数、機械受注統計などの指標は日本経済の回復を示しているほか、今回の月次調査でも多くの企業がさらなる株価上昇を見込んでいることが明らかとなっている。こうした景気の先行きへの好調な指標や企業の楽観的な見方が、先行き見通しDIにも反映されているようだ。
しかし、実体経済では依然としてデフレが進行。特に中小企業は大手より景気DIが低い水準で推移するなど、大手からの単価切り下げ要請などで収益性の低い厳しい経営が続いている。また、2003年8月の倒産件数は1,321件と8カ月連続して前年同月を下回ったが、負債総額は依然として高水準なうえ、不況型倒産や老舗倒産も引き続き多発しており、到底楽観できる状況とは言えない。DIが判断の分かれ目となる50を大きく下回る水準で推移している最大の要因は、こうしたデフレや信用収縮などの懸念がくすぶっているためである。
加えて、個人消費や失業率に回復の兆しが見えないうえ、金利上昇が景気の先行きに対する新たなリスク要因となりつつある。日銀は金利上昇を抑制するため金融市場へ潤沢な資金を供給しているほか、円高進行阻止に向けて必死に市場介入しているが、これは日本の経済基盤がいまだ脆弱であることを示唆している。
景気DIは今年に入って改善傾向をたどっている。だが、日本経済に蔓延しているデフレ不況を早期に克服して経済基盤を強化しない限り、判断の分かれ目を大きく超えて改善するのは困難と思われる。