2003年9月の景気動向調査
景気DIは36.9、8カ月連続して改善
2003年9月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比2.0ポイント増の36.9となり、2003年2月以降8カ月連続の改善となった。改善幅は調査中の円高傾向にもかかわらず前月(1.5ポイント)を上回り、2003年6月以降4カ月連続して1ポイント以上増と足元の景況感は急ピッチで改善している。
また、先行き見通しDIも3カ月後、6カ月後、1年後ともに改善したのは6カ月連続となっており、先行きに対しても楽観的な見方が広がっている。
加えて、金融機関の融資姿勢DIが11カ月連続して改善するなど融資姿勢に前向きな傾向が見られるなか、2003年9月の倒産件数が前年同月比9カ月連続減となる1,238件にとどまっており、金融システム不安を発端とした悲観的な状況は脱しつつある。
ここ数カ月の景況感改善は、大手企業の業績回復が鮮明となってきたことや、デジカメやDVD、携帯電話、自動車など一部の業界で設備投資を拡大する動きが見られるようになったこと、また世界的な株高の流れにも乗って株価が戻り基調となるなど、日本経済の回復期待が高まったことが背景にある。実際、多くの経済統計でも景気回復を裏付けるものが目立ち、政府・日銀は相次いで景気判断の上方修正に踏み切った。
しかし、特に中小企業を中心に依然としてデフレが終息する状況にないとの指摘が多いのが実態で、その結果、中小企業の景気DIは大手より低い水準で推移。8月は、日本経済の回復期待の高まりによる長期金利の上昇などから改善幅がやや縮小。また、調査中の9月下旬からは1ドル=110円を割る水準まで円が急騰したことで、ようやく明るさの見えた日本経済の先行きに不安が広がった。だが実際は、金利上昇による影響については今回の調査で「現段階では影響は限定的」との見方が多く、為替変動リスクの高まりについても、9月の景気DIを見る限り影響はまだ大きくないようだ。
また、倒産件数は落ち着きを見せているとはいえ、負債総額は1兆円超えと依然として高水準なうえ、不況型倒産や老舗倒産も引き続き多発している。DIが判断の分かれ目となる50を下回って推移しているのは、こうしたデフレや信用収縮などの懸念がくすぶっているためだ。
さらに、7割以上の企業が今後も金利は上昇すると予想し、今後の借り入れへの影響を懸念している企業も7割弱に達している。また、これ以上の円高進行は輸出産業を中心に業績の下方修正を強いられ、輸出主導による景気回復シナリオに狂いが生じるとともに、株式市場にとっても売り圧力になるのは避けられない。
これまで業績回復に牽引されて改善傾向をたどってきた景況感だが、今後は為替・金利の動向や、それを反映した大手企業の2003年度の業績見通しなどに左右される局面になりそうだ。