2003年10月の景気動向調査
景気DIは38.4、9カ月連続して改善
2003年10月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.5ポイント増の38.4となり、2003年2月以降9カ月連続の改善となった。改善幅は2003年6月以降5カ月連続して1ポイント以上となっており、足元の景況感は引き続き急ピッチで改善している。
先行き見通しDIについても、3カ月後、6カ月後、1年後ともに改善したのは7カ月連続となった。しかし、改善幅はいずれのDIも7カ月間で最低となっており、景気の先行きに対する期待感はやや弱まっているようだ。
企業の景況感は、大手企業の業績回復期待や一部の業界で設備投資を拡大する動きが見られ始めるなど、日本経済の回復期待の高まりを契機に上昇し始めた。また、日経平均株価が1万円を回復する水準まで戻したことも、マインドの改善につながった。そしてその後、多くの経済統計が景気回復を裏付ける結果となっていることや、上場企業で2003年度決算見通しの上方修正が相次いでいることで、大企業主導による景気回復が一層現実味を増し、ここ数カ月の急ピッチな改善を牽引した。
しかし、中小企業を含めた1万966社に対し2003年度決算見通しについて調査した結果、約4割の企業が期初の業績予想を達成できず、3割以上が依然として減収減益を見込んでおり、上場企業の好決算とは裏腹に中小企業は依然としてデフレ経済下の厳しい環境にあることが裏付けられている。また、景気DIが最低の「北海道」と最高の「関東」ではDI格差が10.2ポイントまで拡大するなど、大都市圏と地方圏の景況感にも大きな差異が生じている。景気DIが判断の分かれ目となる50を下回って推移し、先行き見通しにもやや陰りが見えているのは、中小企業の業績や地方経済の回復が遅れているからだ。11月9日の衆議院総選挙で自民党を中核とする与党が絶対安定多数を堅守したとはいえ、野党である民主党が躍進したのは、明確な中小・地方企業向けの経済対策が打ち出されてこないことへの失望感が背景にあるのは否定できない。
加えて、これまで景況感の改善を牽引した株価にかつての勢いがなくなりつつある。また、1ドル=110円を大きく超えて円高が進行した場合、輸出産業を中心に業績の下方修正リスクが高まり、大企業主導による景気回復シナリオに狂いが生じるのは避けられない。
大手企業の好調な業績を背景に改善傾向を続けている景況感だが、中小企業を取り巻く環境や地方経済に回復が見られない限り、景気DIが判断の分かれ目となる50を超えるのは困難と思われる。また、株式市場や為替の動向も今後の景況感に大きな影響を与えそうだ。