2003年12月の景気動向調査
景気DIは39.2、再び改善幅が拡大
2003年12月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.7ポイント増の39.2となり、2003年2月以降11カ月連続の改善となった。前月の11月調査では改善幅が0.1ポイントまで縮小し、一時的に減速感が見られたが、再び改善幅は拡大した。
また、先行き見通しについても、3カ月後、6カ月後、1年後すべてで前月より改善。11月はともに悪化に転じていたが、再び明るい見方が広がった。
11月に景気DIの改善幅が伸び悩んだのは、政府の懸命な介入にも拘らず対ドルでの円高進行に歯止めがかからないことや、足利銀行の一時国有化で地域経済の地盤沈下が改めてクローズアップされたことが背景にある。また、世界各地でのテロ続発による地政学リスクの高まりによって、国内経済の牽引役である外需への期待が一時的に弱まったうえ、イラクへの自衛隊派遣決定により国内でもテロ不安が高まったことが、景況マインドを停滞させる一因となった。
しかし12月に入って、世界経済の回復期待が根強いことや、売り上げDIや設備稼働率DIなどの改善に見られるように企業業績は着実に回復。米・欧・仏などの堅調な株式市場を受け、日経平均株価が2003年末に1万676円まで回復したことなども、景気DIの改善幅拡大につながった。
こうした国内企業の業績や世界経済の回復を背景に、政府は1月の月例経済報告で景気の基調判断をこれまでの「持ち直している」から2カ月ぶりに上方修正し、3年ぶりに「回復」という表現を盛り込んで事実上の景気回復宣言を行った。
しかし、景気DIを規模別、地域別、業界別に見ると、依然として中小企業および地方圏の景況感は停滞。業界間でも景況感格差が拡大する傾向にあり、大都市圏における製造業などの一部の業界大手しか景況感に回復が見られないのが実態だ。また、同時に行った「地域金融機関の今後の動向予測」調査で、中小企業や地域経済に対して地域金融機関の破綻リスクが高まっていることが浮き彫りになり、2005年4月のペイオフ全面解禁を控え、金融機関の再編・淘汰が地域経済の浮揚への妨げになりかねない。
加えて、日銀が2月上旬のG7(先進7カ国財務省・中央銀行総裁会議)をにらみ1月20日に3兆円の追加金融緩和を決定したのは、円高へのリスクを憂慮していることの表れだ。さらに、国内へのテロ不安は払拭された訳ではなく、1月下旬以降にイラクへの自衛隊派遣が本格的に実施されるのを機に、再びテロへの不安が拡大する可能性が高い。
今後、景気DIが判断の分かれ目となる50ポイントを超えて回復するには、地域経済、中小企業、建設などの不況業界に業況回復の道筋が見えることや、先述した多くのリスクが払拭されることが不可欠なのは言うまでもない。これらが解決しない限り、景況感は外需に依存した形での緩やかな回復にとどまるものと思われる。