2004年6月の景気動向調査
景気DIは44.5、16カ月ぶりの悪化
2004年5月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は44.5となり、前月比0.5ポイント減とわずかながら2003年1月以来16カ月ぶりに悪化した。
また、先行き見通しDIについても、3カ月後、6カ月後、1年後いずれも前月より悪化。前月は1年後のDIが初めて6カ月後を下回り、国内経済の先行きにやや陰りが見え始めていたが、5月はその傾向が一層強まる結果となった。
これまで景気DIが順調に改善してきたのは、外需や設備投資の盛り上がりが内需と消費にも波及してきたことや、それに伴ってデフレ不安も後退していることなどが背景にある。実際、経済産業省が発表した2004年4月の鉱工業生産指数は2カ月連続して増加しているうえ、総務省が発表した「勤労者世帯の家計調査」でも、消費支出(物価変動の影響を除く実績)は前年同月比7.2%増と1982年10月以来の高い伸びとなるなど、多くの経済指標は引き続き国内の堅調な経済状況を示している。
しかし、業界や地域、規模間の景況感が大きく乖離し、縮小する気配が見られないなか、機械受注統計の2004年3月実績が2カ月連続して前月比で悪化し、4~6月の見通しも前年実績割れを見込むなど、1年以上に及ぶ景気回復局面を経て足元経済の一服感を示す指標が出始めた。
また、「原油高によりコスト上昇に見舞われ、製販ともに利益を出せない状況」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売、福岡県)との回答に代表されるように、原油価格の高騰や素材価格の上昇で企業業績に対する不安が高まっている。大手金融グループの一角をなすUFJホールディングスが2004年3月期決算で金融庁による厳格な資産査定の末に大幅赤字に追い込まれ不良債権問題が再び意識されたこと、株式市場が世界的に調整色を強めていることなども、景気DIや先行き見通しDIに対しマイナスに作用したようだ。
加えて、年金改革法案の成立によって、2004年10月から保険料率が引き上げられるが、これに伴って企業の年金負担が増大するほか、企業の対応について調査した結果、約3社に1社で既存の正社員の削減に取り組み、それ以外の企業のなかでも約3分の1が正社員の新規採用見送りなどの雇用調整を行う予定であることが判明。企業の保険料負担増に伴う雇用調整が、今後、回復基調にある個人消費に水を差す可能性は否定できない。
デジタル景気の継続により、上場企業の多くが今期についても業績の回復を見込んでいるが、石油輸出国機構(OPEC)が原油の増産を決定しても価格は高止まりするとの見方が大半で、見込みどおりの業績を上げられるか予断を許さない状況に陥っている。先行きへの期待感も弱まっているだけに、景況感はしばらく国内の経済統計や原油価格、個人消費の動向などを注視しながらの一進一退が続くものと思われる。