2006年3月の景気動向調査
景気DIは47.9、今回の景気回復局面での最高を3カ月ぶりに更新
2006年3月の景気動向指数(景気DI:0~100、50ポイントが判断の分かれ目)は、前月比1.0ポイント増の47.9となった。今年に入って1月(46.9、同0.1ポイント悪化)、2月(46.9、同横ばい)と伸び悩んでいたが、3カ月ぶりに改善に転じ、2005年12月(47.0)を抜いて今回の景気回復局面での最高水準を更新した。
このところの景況感の停滞は、国内経済の良好なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)やデフレ脱却期待の高まりが『不動産』、『サービス』など内需関連業界の景況感を下支えする一方で、原油・素材価格の高止まりによって鉄鋼・非鉄や化学関連卸の景況感が悪化し、年末商戦の反動減の影響を受けた『小売』も下押し要因となるなど、従前の地域間格差に加えて業界・業種間でも景況感格差が拡大していることが背景にあった。
こうしたなか、3月に入って発表されたCPI(全国消費者物価指数)、公示地価がいずれも脱デフレへの道筋を示す内容だったことに加え、日銀が量的金融緩和政策を解除したことで、その傾向がより鮮明となり、前月まで伸び悩んでいた『卸売』や『小売』をはじめ幅広い業界で景況感が大きく改善した。また、好調な企業業績を背景に雇用増や賃上げの実施がみられるようになってきたことや、このところの株価上昇も全体の景況感を押し上げた。
今後については、先行き見通しDIが「3カ月後」、「6カ月後」、「1年後」の3系列いずれも上昇。前月の3系列悪化から一転して先行き期待が高まっており、景況感はしばらく堅調な推移が見込まれる。
しかし、依然として「1年後」が「6カ月後」を下回る状況が続いており、中・長期的な景気回復の持続力に対する不透明感はいまだ払拭されていない。これは、「原材料高の末端への転嫁ができず川下にいくほど苦しく、景気は上向いているのにまったく利益が出ない」(プラスチック製品製造、東京都)との声に表れているように原油高の影響が深刻さを増していることや、「今後のゼロ金利解除や消費税率アップなどの影響で、企業の設備投資や個人消費がどれだけマイナスになるか分からない」(医薬品製造、東京都)といった、個人消費の先行きに腰折れ懸念がくすぶっていることが背景にある。実際、今回、ゼロ金利解除後の国内経済の行方について尋ねた結果、金利上昇を克服できず景気回復基調が「腰折れする」と回答した企業が35.9%(3,570社)にのぼり、特に中小企業、地方圏でその割合が高い結果となった(別紙「特別企画」参照)。
国内経済は着実に脱デフレに向かっていることで、全体の景況感はしばらく強含みの展開が予想される。4月3日に発表された日銀の企業短期経済観測調査(短観)でも、先行き改善が見込まれている。しかし、原油価格の動向や増税・ゼロ金利解除後の個人消費などの不安要素が払拭されず、地方経済の回復途上という構造的な課題を抱えている現状では、回復は緩やかなものにとどまると思われる。