2008年5月の景気動向調査
景気DIは34.1、3カ月連続で悪化し4年10カ月ぶりの低水準
< 2008年4月までの概況 : 減速 >
2007年夏以降、サブプライム問題の表面化により米景気が減速傾向となり、原油高や円高、株安が進行。2008年3月には一時1ドル=95円台まで円高が進み、NY原油先物相場は年初から約2割上昇し、4月下旬に1バレル=119ドルを突破。外需の減速と内需の停滞が景況感を押し下げた。
< 2008年5月の概況 : 減速 >
2008年5月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.9ポイント減の34.1となり3カ月連続で悪化した。2003年7月(33.4)以来4年10カ月ぶりの低水準となり、地域別では全国10地域のすべてが悪化。特に、『東海』(36.7、同1.4ポイント減)は悪化幅が10地域中で最大となり、2003年8月以来4年9カ月ぶりの水準となるなど、都市圏でも停滞傾向となっている。
また、原油・素材価格の一段高によって企業の収益環境が悪化しているほか、「生産・出荷量DI」(44.5)は集計開始(2006年5月)以来の最低水準となり、2002年5月から集計している「設備投資意欲DI」(42.4)もこれまでの最低水準を更新。企業活動には停滞感が広がっており、国内景気は減速が鮮明となっている。
原油・素材価格の騰勢が加速 → 企業の収益環境が悪化、規模間格差は最大に
・NY原油先物相場(WTI)が5月下旬に一時1バレル=135ドルを突破し、年初~4月までの過去4カ月間の上昇幅に迫るなど騰勢が加速。生活必需品を中心に値上げはあるものの、個人消費の停滞から十分な価格転嫁は進まず企業の収益環境が悪化
・「中小企業」(32.9)からは、「原材料の度重なる上昇にもかかわらず、値下げ要求が多発」(印刷、福島県)との厳しい声が挙がっており、「大企業」(38.8)との格差は過去最大の5.9ポイントに拡大
サブプライム問題の長期化による外需減速 → 『製造』は4年10カ月ぶりの低水準に
・サブプライム問題の長期化による米景気の減速の影響によって、国内でも幅広く景況感が悪化。これまで景気回復を牽引してきた『製造』(35.6)は「電気機械」をはじめ全業種で悪化し、2003年7月以来4年10カ月ぶりの低水準に落ち込む
北京五輪による景気底上げは期待薄 → 消費が回復せず、『小売』は5年ぶりの低水準に
・北京五輪(2008年8月)を控えているが、日本経済への波及効果を期待していない企業が半数近くを占めている(参照:特別企画調査)。景気減速や政策不信の影響で個人消費は回復せず、『小売』(31.5)は2003年5月以来5年ぶりの水準に悪化
< 今後の見通し : 減速 >
米国は、雇用環境の悪化や住宅価格の下落で内需の停滞が続いている。また、新興国の需要増や投機マネーの流入により、原油やレアメタル、穀物などの価格高騰が収束する兆しはない。「中国・四川大地震による復興需要によって値上がりが続く」(運送、北海道)との見方もある。「燃料高騰を企業努力で吸収するのはそろそろ限界」(リネンサプライ、東京都)との声も聞かれ、今後の企業活動への悪影響が懸念される。
さらに、年金や後期高齢者医療制度など政策の諸問題に加え、生活必需品やガソリン価格などは一層の上昇傾向にあり、個人消費の動向も懸念される。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(37.2、前月比0.5ポイント減)、「6カ月後」(38.0、同0.7ポイント減)、「1年後」(39.5、同0.7ポイント減)と、2カ月ぶりに3指標すべてが悪化した。先行き不透明感が広がっており、国内景気はしばらく減速を続ける公算が大きい。