2008年6月の景気動向調査
景気DIは32.7、4カ月連続で悪化し5年ぶりの低水準
< 2008年5月までの概況 : 減速 >
2007年夏以降、サブプライム問題の顕在化により米景気が停滞し、日本の景気回復を牽引してきた外需が減速。さらに、原油・素材価格の高騰によって企業の収益環境が悪化傾向となったほか、食料品など生活必需品の値上がりや政策不信による消費意欲の低下なども影響して、景気の減速につながった。
< 2008年6月の概況 : 減速 >
2008年6月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.4ポイント減の32.7と4カ月連続で悪化。その悪化幅は拡大傾向を続け、2003年6月(30.8)以来5年ぶりの低水準となった。
原油・素材価格の一段高によって企業の収益環境が厳しさを増し、食料品など生活必需品の値上がりにより個人消費も脆弱となって景気の減速に拍車をかけた。
業界別で『製造』が5年ぶりの低水準となったほか、地域別では3カ月連続で全国10地域すべてが悪化。特に『東海』(34.1、同2.6ポイント減)は2カ月連続で悪化幅が10地域中最大となって5年ぶりの水準に落ち込むなど、都市圏の悪化が前月以上に目立った。企業活動には一層の停滞感が広がっており、国内景気は減速が続いている。
原油・素材価格が一段と高騰 → 企業の収益環境が悪化し、個人消費も脆弱に
・NY原油先物相場(WTI)が6月下旬に一時1バレル=140ドルを突破し、年初から4割上昇。「価格交渉が困難で非常に厳しい」(包装資材卸売、東京都)との声が挙がるなど、企業の収益環境は悪化傾向が続いている。中小企業ほど価格転嫁は厳しさを増しており、規模間格差は過去最大の6.1ポイントに拡大した。
・一方、「仕入れ値を吸収してきたものの体力が限界」(飲食料品卸売、大阪府)に達してきたことで、食料品など生活必需品の値上げが相次ぎ、「消費者の買い控え」(飲食料品製造、千葉県)につながる悪循環に陥っている。『小売』(28.7)は『建設』(26.9)、『農・林・水産』(27.0)に次ぐ水準に悪化し、脆弱な個人消費が顕著となった。
サブプライム問題による外需減速 → 牽引役であった『製造』や『東海』が5年ぶりの低水準
・サブプライム問題による米景気の停滞によって、国内でも幅広く景況感が悪化。好調な外需によってこれまで景気回復を牽引してきた『製造』(34.4)は、2003年6月以来5年ぶりの低水準となった。同様に『東海』(34.1)も「自動車関連が低調で下請けを含め設備投資が減少している」(金属製品製造、愛知県)など厳しい状況となっており、同5年ぶりの水準に落ち込んだ。
< 今後の見通し : 減速 >
米国は、サブプライム問題の長期化によって金融不安が払拭されず、ガソリンや食料品の高騰、住宅価格の下落などで内需の停滞が続いている。新興国の需要増に加えて、バイオ燃料政策や干ばつなどによる食物生産量の低下、投機マネーの流入などによって原油やレアメタル、穀物などの価格高騰が収束する兆しはない。
国内では、外需の減速と脆弱な個人消費によって企業の「生産・出荷量DI」(43.4)や「設備投資意欲DI」(41.3)が最低水準を更新。年金や後期高齢者医療制度、消費税をはじめとする税制改革など政策の諸問題が山積するなか、食料品に加えて電気・ガスなど生活関連費の一層の上昇が見込まれており、個人消費の動向も懸念される。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(36.1、前月比1.1ポイント減)、「6カ月後」(36.8、同1.2ポイント減)、「1年後」(38.6、同0.9ポイント減)と、2カ月連続で3指標すべてが悪化。先行き不透明感は根強く、国内景気はしばらく減速が続くとみられる。