2008年7月の景気動向調査
景気DIは31.2、減速とまらず国内景気はすでに「後退」局面の可能性
< 2008年6月までの概況 : 減速 >
2007年夏以降、サブプライム問題の顕在化により米景気が停滞し、日本の景気回復を牽引してきた外需が減速。さらに、原油・素材価格の高騰によって企業の収益環境が悪化し、食料品をはじめとする生活必需品の値上がりや年金問題など政策不信による消費マインドの低下も影響して、景気の減速につながった。
< 2008年7月の概況 : 減速 >
2008年7月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.5ポイント減の31.2と5カ月連続で悪化。その悪化幅は拡大が続いており、2003年6月(30.8)以来5年1カ月ぶりの低水準となった。
原油・素材価格が高騰し、光熱費や生活必需品などの値上がりが相次いでいるものの、消費マインドの低下による根強い価格の下押し圧力によって、企業の収益環境は厳しさを増している。業界別でみると、個人消費を反映する『小売』が5年3カ月ぶり、外需の減速で『製造』が5年1カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。また、地域別では4カ月連続で全国10地域すべてが悪化し、引き続き都市圏での悪化が目立った。
景気DIの悪化基調は集計開始以来、最長の16カ月に至っており、回復傾向が鮮明となり始めた2003年6月の30.8を割る水準に迫っている。都市圏を中心に企業活動は停滞感が一段と強まっており、国内景気はすでに後退局面に入っている可能性が高い。
原油・素材価格の高騰 → 物価上昇と高まる生活防衛意識の狭間で収益環境が悪化
・NY原油先物相場(WTI)が7月11日に一時1バレル=147ドルを突破し、年初から約5割上昇。原油・素材価格高騰分の企業における吸収は「経営努力の限界」(運輸、栃木県)を超え、ガソリンや光熱費、食料品などの値上げが相次いだ。
・こうしたなか、景況感の悪化や雇用・年金問題などによる生活防衛意識の高まりによって消費マインドが低下し、「値上げ交渉は困難で利益率が低下」(飲食料品製造、栃木県)する状況に拍車がかかった。さらに、「必需品以外の需要が極端に悪化」(精密機械卸売、熊本県)するなど、企業の収益環境は一層悪化した。
サブプライム問題による外需減速 → 牽引役であった『製造』や『東海』が一段と悪化
・景気回復を牽引してきた『製造』が、5年1カ月ぶりの水準に悪化した。同様に、不動産バブルの崩壊が顕著な『不動産』は5年4カ月ぶり、脆弱な内需が浮き彫りとなっている『小売』は5年3カ月ぶりの水準となった。地域別では『東海』が「受注が減少」(自動車部品製造、愛知県)するなど厳しく、都市圏中心に全地域で悪化した。
< 今後の見通し : 減速 >
米住宅公社2社の経営不安が表面化し、サブプライム問題は依然として底が見えない状況が続いている。地政学リスクの緩和や投機規制の動きによって、NY原油先物相場(WTI)は7月下旬に120ドル台前半まで反落したものの、新興国の需要増に変わりはなく、レアメタルや食料などと併せて今後の価格動向も楽観視はできない。
国内では、外需の減速によって『製造』の「設備投資意欲DI」は最低水準を更新している。雇用や年金問題、税制改革など政策の諸問題を抱えて先行き不安が増幅するなか、ガソリンや光熱費、食料品などの生活必需品に加えて、耐久消費財でも値上げの動きが目立ち始めており、内需がさらに停滞することが懸念される。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(34.4、前月比1.7ポイント減)、「6カ月後」(34.7、2.1ポイント減)、「1年後」(37.2、1.4ポイント減)と3カ月連続で3指標すべてが悪化。先行きに反転の兆しはなく、国内景気はしばらく下振れ傾向が続くとみられる。