2008年8月の景気動向調査
景気DIは30.3、悪化に歯止めかからず5年3カ月ぶりの低水準
< 2008年7月までの概況 : 後退 >
2007年夏以降、サブプライム問題の顕在化により米景気が停滞し、日本の景気回復を牽引してきた外需が減速。さらに、原油・素材価格の高騰によって企業の収益環境が悪化し、食料品をはじめとする生活必需品の値上がりや年金問題など政策不信による消費マインドの低下が影響して、景気の後退につながった。
< 2008年8月の概況 : 後退 >
2008年8月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.9ポイント減の30.3と6カ月連続で悪化し、2003年5月(28.5)以来5年3カ月ぶりの低水準となった。
原材料価格の高騰が長期化し、光熱費や生活必需品などの値上がりが続いた一方、家計での節約志向が高まったことで、川下からの価格下押し圧力が強まり、企業の収益性は厳しさを増した。業界別では『不動産』が過去最低を記録したほか、外需の減速で『製造』も悪化傾向が続いた。また、北京五輪による消費の底上げ効果は飲料やデジタル家電など一部にとどまり、『小売』は5年4カ月ぶりの低水準となった。
地域別では、『南関東』『東海』が5年3カ月ぶりの水準となり、都市圏を中心に9地域が悪化するなど企業活動は停滞感が増幅。国内景気は後退局面が続いている。
信用収縮と購買意欲の低下により不動産バブルが崩壊 → 『不動産』が過去最低を記録
・世界的な金融市場の混乱と信用収縮、マンション不況など購買意欲の低下によって景気回復の象徴的な存在であった『不動産』(25.2)が過去最低を記録。東証1部上場のアーバンコーポレイションが倒産するなど、不動産バブルの崩壊が顕著となった。
外需の減速 → 牽引役であった『製造』や『南関東』『東海』の悪化止まらず
・景気回復を牽引してきた『製造』(32.4)が、2003年6月以来5年2カ月ぶりの水準に悪化。同様に、『南関東』(32.0)や『東海』(31.7)の悪化も止まらず、ともに2003年5月以来、5年3カ月ぶりの低水準となった。
物価高に加えて所得・雇用環境の悪化や政策不信 → 節約志向が強まり『小売』が低迷
・NY原油先物相場(WTI)は、最高値をつけた7月の一時1バレル=147ドル台から8月15日には同111ドル台まで戻したが、生活必需品を中心に価格の上昇が継続。
・家計では、物価高に加えて所得や雇用環境の悪化、医療・年金問題など政策不信による生活防衛意識の高まりによって節約志向が強まり、『小売』(28. 0)が5年4カ月ぶりの低水準となった。
< 今後の見通し : 後退 >
サブプライム問題が長期化するなか、米経済に加えてユーロ圏や豪州でも減速が表面化。米ドルへの資金環流によって、NY原油先物相場(WTI)は1バレル=120ドル前後とやや落ち着いているが、高値圏であることに変わりはなく、今後も新興国での需要増が見込まれることから、レアメタルや穀物、食料品価格などと併せて楽観はできない。
国内では、外需の減速と内需の停滞によって景気後退が鮮明となっている。8月1日、福田首相は内閣改造に踏み切ったが、総合経済対策や医療・年金、税制など課題が山積しており、家計の生活不安を払拭するには至っていない。小麦や乳製品、耐久消費財など諸物価の値上がり傾向は収束せず、内需はさらに弱含む可能性がある。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(33.6、前月比0.8ポイント減)、「6カ月後」(33.8、0.9ポイント減)、「1年後」(37.0、0.2ポイント減)と4カ月連続で3指標すべてが悪化。先行きに反転の兆しはなく、国内景気は後退局面が続くとみられる。