2008年9月の景気動向調査
景気DIは29.3、国内景気は一段と後退し5年4カ月ぶりに30割れ
< 2008年8月までの概況 : 後退 >
2007年夏以降、サブプライム問題が表面化し、外需が減速。原材料価格の高騰による生活必需品の値上がりによって消費マインドが低下し、企業の収益性が悪化。金融市場の混乱と信用収縮によって不動産市況も悪化し、景気後退が鮮明となった。
< 2008年9月の概況 : 後退 >
2008年9月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.0ポイント減の29.3と7カ月連続で悪化し、2003年5月(28.5)以来5年4カ月ぶりに30ポイントを下回る低水準となった。
原材料価格の高騰による生活必需品の値上がりによって生活不安が増大し、消費者心理が悪化した。生活防衛意識の高まりにより企業の収益性が一段と低下するなか、9月16日、米リーマン・ブラザーズが破綻し、米国発の金融危機が増幅。外需の減速や信用収縮が加速して、国内の景気回復を牽引してきた『製造』が5年4カ月ぶりの水準に悪化し、『不動産』は前月に続き過去最低を更新した。
地域別では、『東海』が調査開始以来、初めて上位3位圏外の5位となって景気の牽引役から脱落。都市圏を中心に悪化傾向に歯止めがかからず、企業活動には停滞感が増しており、国内景気は一段と後退している。
サブプライム問題による金融危機の増幅 → 外需の減速や信用収縮が一段と加速
・米リーマン・ブラザーズの破綻やAIGの実質国有化など、米国発の金融危機が増幅。外需が一段と減速し、国内の景気回復を牽引してきた『製造』(30.9)は5年4カ月ぶりの低水準に悪化。『不動産』(24.7)も信用収縮の広がりによって過去最低を更新。
・都市圏の悪化に歯止めかからず、『南関東』(30.6)、『東海』(29.7)とも5年4カ月ぶりの水準に悪化。特に『東海』は自動車関連の低迷によって悪化幅が全国10地域中最大となり、初めて上位3位圏外の5位に落ちるなど景気の牽引役から脱落した。
物価上昇や雇用環境の悪化で生活不安が増大
→ 消費者心理がさらに悪化し、企業の収益性が一層低下
・NY原油先物相場(WTI)は1バレル=100ドルを挟む水準でやや落ち着いたが、生活必需品を中心に値上げが継続。雇用環境の下振れとともに消費者心理が一層悪化。
・福田政権が安倍前政権に続き1年で崩壊し、政局が混迷を深めた。事故米問題の対応を巡って食の安全に懸念が高まり、医療・年金など解決のめどがたたない諸問題も生活不安を増大させ、消費者心理を悪化させた。仕入れ価格の上昇が続く一方、川下からの価格下押し圧力は強まっており、企業の収益性は一層低下した。
米金融危機は収束する見込みがたたず、依然としてサブプライム問題の底がみえないなか、世界経済への影響拡大が懸念されている。さらに、原油や穀物などの原材料価格は、新興国の需要増や米ドルの信認低下、生産国の動向などと併せて楽観できない。
国内では、外需の減速や内需の停滞などによって『製造』の「設備投資意欲DI」が過去最低を更新。9月24日、麻生新政権が発足したが、景気対策や医療・年金、税制など課題は山積しており、厚生労働行政に加えて農林水産行政への不信感も募るなか、組閣5日目にして国土交通大臣が辞任。生活必需品の値上がりや雇用環境の悪化とともに、消費者の生活不安が増大しており、一層の内需停滞は避けられない。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(32.5、前月比1.1ポイント減)、「6カ月後」(32.9、0.9ポイント減)、「1年後」(36.4、0.6ポイント減)と5カ月連続で3指標すべてが悪化。先行きに反転の兆しはなく、国内景気は後退局面が続くとみられる。