2008年10月の景気動向調査
景気DIは26.5、過去最大の悪化幅を記録し国内景気は一段と後退
< 2008年9月までの概況 : 後退 >
2007年夏以降、サブプライム問題が表面化し、外需が減速。原材料価格の高騰による生活必需品の値上がりなどによって消費マインドが低下し、企業の収益環境が悪化。米リーマン・ブラザーズの破綻などで、米国発の金融危機が増幅した。
< 2008年10月の概況 : 後退 >
2008年10月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比2.8ポイント減の26.5と8カ月連続で悪化した。2008年1月と並んで過去最大の悪化幅を記録し、最低だった2003年1月(26.1)以来5年9カ月ぶりの低水準となった。
米金融危機が欧州に拡大して急激な円高・株安が進行し、金融機関や輸出関連企業を中心に業績の下方修正が相次ぐなど国内企業への影響が拡大。日経平均株価はバブル崩壊後の最安値を更新し、雇用・所得不安の増大とともに消費者心理を低下させ、J-REIT初の倒産などで悪化が顕著な『不動産』や『小売』が過去最低となった。また、外需の減速で『製造』も2003年1月以来の低水準となるなど10業界すべてが悪化した。
地域別では、自動車関連を中心に景気回復の牽引役を担ってきた『東海』が続落。都市圏を中心に全国10地域すべてが悪化するなど企業活動は停滞しており、国内景気は一段と後退している。
米金融危機が欧州に拡大 → 急激な円高、株安が進行し企業業績を圧迫
・米金融危機が欧州に拡大し、各国政府は公的資金の注入で金融システム安定化を図ったものの、実体経済への影響が避けられない情勢となるなかで、ロンドン市場では一時1ドル=90円台(24日)、NY市場で同1ユーロ=113円台(27日)と円独歩高に。
・一方、日経平均株価は一時6,994円90銭とバブル崩壊後の最安値を更新(28日)。外需の減速に加えて、急激な円高や株安が進行したことで、金融機関や電機・自動車など大手製造業をはじめ業績の下方修正が相次ぐなど国内企業への影響が拡大した。
株安や雇用・所得不安の増大で消費者心理が一段と悪化 → 『小売』『不動産』が過去最低
・NY原油先物相場(WTI)は一時1バレル=61ドル台(27日)となるなど原油・素材価格が急速に下落。ガソリン価格は落ち着き始めたが、これまで値上げが続いた食料品などでは価格改定に至っておらず、生活防衛意識は高止まりの状況が続いた。
・政局が不安定で医療・年金問題などが進展しないなか、急激な株安や雇用・所得不安の増大によって消費者心理が一段と悪化。『小売』や『建設』、『不動産』、『運輸・倉庫』が過去最低に落ち込んで、内需の停滞が浮き彫りとなった。
< 今後の見通し : 後退 >
欧米の金融システムの混乱は続いている。アジア各国の経済にも影響が拡大しており、世界経済への先行き不透明感は高まっている。
国内では、外需の減速と内需の停滞が続くなか、企業の「設備投資意欲DI」が過去最低を更新。サブプライム問題による損失の広がりや円高、株安による企業業績への影響も拡大、長期化する懸念が高い。また、企業活動の停滞によって雇用・所得不安も増幅しており、食料品価格の高止まりと併せて生活防衛意識は今後も強まっていくとみられる。政府の経済対策には景気の下支え役としての効果が期待されるが、欧米の景気が後退するなかで、内需は一層の弱含みとなる可能性が高い。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(28.5、前月比4.0ポイント減)、「6カ月後」(28.9、4.0ポイント減)、「1年後」(33.3、3.1ポイント減)と6カ月連続で3指標すべてが悪化。先行きに反転の兆しはなく、国内景気は後退が続くとみられる。