2008年12月の景気動向調査
景気DIは20.4、悪化幅4.1ポイントは過去最大で不況感強まる
< 2008年11月までの概況 : 後退 >
2007年夏以降、サブプライム問題が広がり、2008年9月のリーマン・ショック後には金融危機が欧州へ拡大し実体経済に波及。外需の減速と内需の停滞によって収益環境が悪化し、株式市場の停滞や円高などが加わり企業業績に悪影響が広がった。
< 2008年12月の動向 : 後退 >
2008年12月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比4.1ポイント減の20.4となり10カ月連続で悪化した。2008年1月、同年10月の2.8ポイント減を大幅に上回って調査開始以来、最大の悪化幅を記録し、前月(24.5)に続いて2カ月連続で過去最低を更新した。
業界別では、外需の減速や内需の停滞によって『製造』や『建設』『不動産』が過去最低を更新して、初めて20ポイントを下回る低水準に落ち込んだ。
地域別では、全国10地域すべてが過去最低を更新した。特に、『東海』(18.5)の悪化が著しく、深刻な自動車不況の影響によって域内の『製造』(16.5)や『小売』(17.0)の不振が際立った。業界別、地域別ともに悪化に歯止めはかからず、国内景気は後退が続いており、不況感が強まっている。
欧米の景気後退で外需が減速 → 企業収益が悪化、生産調整加速し設備投資活動も後退
欧米が景気後退に陥り、中国などの新興国でも景気の下振れが鮮明となるなか、外需が一段と減速し、円高の定着なども影響して、企業の収益環境が悪化した。
・企業収益が悪化:「売り上げDI」(製造)が大幅減で過去最低を更新するなど、自動車や電機などを中心に企業収益が悪化。2008年度通期見通しの下方修正も続出した。
『売り上げDI』(製造):6.6ポイント減の30.5(悪化幅最大、前年同月49.4)
・生産調整が加速し、設備投資活動も後退:急速な経営環境の悪化を受け、自動車や電機、鉄鋼、化学などで生産調整が加速し、設備投資計画の凍結・延期が広がった。
『生産・出荷量DI』(製造):6.0ポイント減の31.2(悪化幅最大、前年同月49.8)
『設備稼働率DI』 (製造):5.1ポイント減の35.0(悪化幅最大、前年同月50.7)
『設備投資意欲DI』(製造):6.2ポイント減の27.1(悪化幅最大、前年同月46.5)
雇用環境が悪化し所得不安も増大 → 消費者心理が一段と低下し、内需が低迷
製造業の生産調整加速の影響などによって、『従業員数DI』は「正社員」「非正社員」とも8カ月連続減と雇用情勢が悪化。年末商戦を迎えたが、所得不安も増大するなかで消費者心理が一段と低下し、『小売』『サービス』など内需の低迷に拍車をかけた。
< 今後の見通し : 後退 >
欧米では、生産や設備投資、雇用などの悪化が続いている。消費低迷が長期化し、早期改善に向かう見通しは立っておらず、新興国への影響も拡大している。
国内では、外需の減速と内需の停滞によって、企業の生産や設備投資活動は縮小が避けられない。WTI先物価格の急落など原材料価格の下落は好材料だが、円高の影響に加え、景気後退が進むなかで取引先からの値下げ要請や先安感からの買い控えにより、企業収益を悪化させる懸念は高い。非正社員の大量解雇など急激な雇用調整は大きな社会問題となっており、正社員でも給与カットや希望退職募集の動きが目立ち始めている。今後も家計の生活防衛意識は一層強まり、内需は一段と弱含む公算が大きい。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(21.9、前月比4.5ポイント減)、「6カ月後」(22.5、4.3ポイント減)、「1年後」(28.3、3.7ポイント減)と8カ月連続で3指標すべてが悪化。先行き悲観的な見方が広がっており、国内景気は後退が続くとみられる。