サプライチェーンの「脱中国」は実現されているのか?

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大を背景に、サプライチェーンの脆弱性が顕在化している。


感染が拡大し始めた当初は中国を中心に海外の生産ラインが停止し、部品や資材調達の滞りが起き始めたことで国内工場の一時的な操業停止や生産調整の動きが出ていた。そののち、外出自粛やテレワークの急速な普及などを背景とするパソコンや家電の需要の拡大などにより、半導体不足が発生した。それに加えて、新型コロナの蔓延やその対策による労働力不足などを背景にコンテナ不足が深刻化したことや米国経済の急回復などにより、日本では木材などの材料不足も発生し、生産調整を余儀なくされた企業もみられている。


そのようななか、世界各地で生産拠点の国内回帰・多元化ならびに「脱中国」の動きが注目されてきた。なかでも日本政府は生産拠点の国内回帰およびASEANなど第3国への多元化を促す補助金制度を設けている。2021年3月12日から5月7日の間に実施されていた「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の2次公募[1]での申請数は280件、金額は約3,118億円と、補助金予定額2,108億円の約1.5倍となった[2]。引き続き、生産拠点を国内に回帰させる動きはみられるものの、以前当コラム(「生産拠点の国内回帰・多元化の動きは続くか」)で取り上げた1次公募の倍率(約11倍)と比べると勢いが弱まったように見受けられる。


こうしたサプライチェーンの多元化は、特に生産拠点が集中する中国への依存からの脱却を意味するものである。しかし、実際のところ、日本において「脱中国」はどの程度進んだのであろうか?


財務省と日本銀行が発表した国際収支統計によると、新型コロナの影響が拡大し始めた2020年の日本による中国への対外直接投資は前年比5.0%減の1兆1,046億円となった。投資額は減少したが、対世界への直接投資の減少率(同51.3%減)を大幅に下回っている。中国向けは日本の対外直接投資全体の8.9%を占め、前年から4.3ポイント増となった。


他方、国際連合の貿易統計のデータベースUN Comtradeをみると、2020年における日本の対中輸入額は前年比3.2%減の1,638億5,056万ドルとなった。しかし、世界全体からの輸入額が同11.9%減となったことを考えると、こちらも相対的な減少率は小さい。その結果、日本全体の輸入に占める対中比率は25.8%と、前年比2.3ポイント増であった。


このように、新型コロナの影響により対中直接投資や輸入額は減少しているものの、日本の対外直接投資や輸入額に占める対中比率は増加しており、総じてみると脱中国依存の進展はみられないと言えよう。


2021年に入ってから、半導体に加え、木材、鉄鋼、燃料などの材料不足が深刻化している。さらに、感染拡大の影響により海外工場が再度停止し、自動車関連部品の供給に大きな支障をきたしており、自動車メーカーにおける減産の動きが出ている。このような状況下、サプライチェーン強靭化の重要度はますます高まっていくであろう。2021年以降の「脱中国」などサプライチェーンの多元化の動きに注目したい。



[1] 経済産業省、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金(2次公募)の採択事業が決定されました(2021年7月2日)
[2] 最終的には151件(約2,095億円)の事業が採択された。

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