来年は給料が上がる?賃上げ動向に注目

政府・与党は「賃上げ」実現を目指し、給与の引き上げに積極的な企業の税負担を軽くする「賃上げ税制」を強化する方針を示しています。


現在、雇用者への一定以上の給与や教育訓練の増額などを行うと、大企業の場合は最大で増加額の20%、中小企業では最大で増加額の25%が法人税から差し引かれますが、政府はその控除率を大企業で最大30%、中小企業で最大40%に引き上げる旨を「2022年度税制改正大綱」に盛り込みました。

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しかし、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大や原材料価格の高騰など経営環境が厳しいなか、企業の賃上げは現実的なのでしょうか?


意外なことに、新型コロナショック下のなか税制優遇幅に関わらず2022年度に賃上げを行う企業は48.6%であることが最新の調査[1]で明らかになりました。その背景の1つとして、人手不足感が再び高まりつつあることで、企業では従業員の定着・確保を目的に賃上げを実施する予定であることが考えられます。

【賃上げに関する企業の見解】
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実際、帝国データバンクが2006年より毎年実施している「賃金動向に関する企業の意識調査」では、2007年調査以降15年連続で「労働力の定着・確保」が賃金を改善する理由として第1位にあげられています。最新調査[2]によれば、その割合が78.7%にのぼっており、人材の定着・確保のために賃上げを実施する傾向は引き続き強いことが示されています。


他方、税制優遇が大きくなれば賃上げを行う企業は8.5%でした。つまり、既述の通り賃上げ税制が改正されれば計57.1%の企業が賃上げを行うことが期待できます。さらに、税制優遇が大きくなれば賃上げを検討する企業は22.3%となり、実に79.4%の企業が賃上げに前向きでした。


一方で、企業の8.1%は「税制優遇幅に関わらず賃上げできない」と考えており、なかでも小規模企業においては賃上げできない企業が13.5%と、全体を大幅に上回っていました。厳しい経営環境のなか財務力が比較的弱い小規模企業は賃上げが難しい状況となっているうえに、法人税を納めていない赤字企業も多く、減税の効果が及ばないことが一因になっていると考えられます。


政府は上述の赤字企業に関する制限を考慮し、賃上げする赤字の中小企業を対象とした補助金を増加させるなど、賃上げの実現を目指しあらゆる手を打とうとしています。政策の効果は未知数ではありますが、多くの企業で賃上げが実施されれば家計消費の拡大を通じて企業の売り上げの増加につながることが期待できます。今後の賃上げ動向から目が離せません。



[1] 帝国データバンク「2022年度の賃上げに関する企業の意識アンケート」(2021年11月16日発表)
[2] 帝国データバンク「2021年度の賃金動向に関する企業の意識調査」(2021年2月15日発表)

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