東京五輪・パラリンピックに関する企業の意識調査

東京五輪のレガシー、今後5年間で8兆8千億円の売上増を期待
~ 旅行業など「運輸・倉庫」業で将来の効果を見込む企業が多い ~

はじめに

2021年7月から9月にかけて、当初より1年延期された東京五輪・パラリンピックが開催され、開催国の日本はこれまでの大会を上回る数の金メダルを獲得するなど「スポーツの祭典」は多くの人々に感動を与えた。一方で、新型コロナウイルス感染拡大防止のため多くの会場で無観客や移動制限などの制約があるなかでの開催となり、さまざまな関連消費が伸び悩んだことによって企業が当初想定していた効果と異なった結果も生じている。
そこで、帝国データバンクは、東京五輪・パラリンピックに対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2021年9月調査とともに行った。

※調査期間は2021年9月15日~30日、調査対象は全国2万4,516社で、有効回答企業数は1万2,222社(回答率49.9%)。なお、東京五輪に関する調査は2019年10月に続いて、今回で4回目


1. 東京五輪の開催で売り上げが増加した企業、開催前が最も高く8.6%

東京五輪の開催によって、どの程度売り上げが増減したか 尋ねたところ、増加に関しては開催前 が8.6%で最も高かった。一方で、「開催期間中の効果」、「開催後の効果」 と将来にかけて徐々に少なくなっている。減少に関しては開催期間中が4.1%で最も高い。また、売上高の平均額では開催前が最も高く平均2,150万円となり、開催期間中では447万円、開催後の見込みでは657万円となった。企業全体でみると、今後の5年間で8兆8,263億円の売上増加を期待していると試算された。

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東京五輪の開催によって売り上げが増加した割合を業界別にみると、『運輸・倉庫』がそれぞれの期間において最も高かった。その他、開催前の効果としては『建設』の売上高平均額が3,973万円でトップとなった。また地域別では主な開催地となった『南関東』において、それぞれの期間で増加とする割合が最も高かった。

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2. 東京五輪・パラリンピックの開催、2021年の日本経済に「有効」と考える企業は22.4%


東京五輪・パラリンピック(以下、東京五輪)の開催が2021年の日本経済にとって有効だったかを尋ねたところ、「有効だと思う」と回答した企業は22.4%だった。一方、「有効とは思わない」は44.8%となり、「分からない」は32.9%だった。


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東京五輪が日本経済に「有効だと思う」企業を規模別でみると、「大企業」は26.2%で全体(22.4%)を上回ったものの、「中小企業」(21.6%)や「小規模企業」(21.0%)は全体以下にとどまった。また、主な開催地である『東京都』では21.1%、『南関東』では20.9%においても全体を下回る結果となった。
企業からは、「低下した消費マインドが浮揚するきっかけとなることを期待したい」(一般土木建築工事、沖縄県)との意見があった一方で、「開催期間中に首都高速が値上げになった影響で一般道が混雑したため、既存の営業活動が効率的に行えなかった」(自動車部分品・付属品卸売、東京都)や「原則無観客のため、効果はほとんどなかった」(一般貨物自動車運送、千葉県)といった声もあげられた。


まとめ

1964年以来57年ぶりの自国開催となった東京五輪・パラリンピックは、新型コロナウイルスの影響で1年延期されたことに加え、多くの制約下での開催となった。そうしたなか、東京五輪の開催が2021年の日本経済にとって有効だと感じている企業は2割超にとどまり、多くの企業は有効でないと感じていた。主な開催地である東京都や南関東でも同様の傾向がみられた。

また、東京五輪の開催による売り上げの増加に関しては、開催前、開催期間中、開催後の見込みそれぞれで増加と回答した割合は1割以下となったなかでも、8兆円を超えるレガシーが期待されている。その他、施設の建て替えなどで旺盛な需要が目立った建設業界は、開催前の売上高平均額が高水準だった。主な開催地となった南関東では他地域と比較して売り上げが増加する企業の割合が高かったものの、都市部から離れた地域では総じて低く、東京五輪の開催による恩恵はあまり行き届いていない結果となった。

東京五輪によって売り上げが増加した企業は少数にとどまるなかで、当初期待していたものより限定的であるとの声が少なくなかった。新型コロナ下で資金面が厳しいなか五輪需要に希望を見出していた企業にとっては、従来の想定通りとはいかなかったとみられる。企業においては、取引先の動向を探るうえで東京五輪がどのように作用し、今後いかなる影響が生じるかは重要な一考となろう。


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