企業の価格転嫁の動向調査(2021年12月)

原材料費など仕入単価、企業の64.2%で前年同月と比べ上昇
~仕入単価が上昇した企業の半数では、販売単価に転嫁できず~

新型コロナウイルスの感染拡大により海上運賃や、木材や金属などの原材料価格が高騰している。また、レギュラーガソリンの全国平均価格(1リットルあたり)が13年ぶりに170円を超え、政府はガソリン価格の高騰を抑制すべく、石油元売りに対し補助制度を発動することを決定。そうしたなか、今後も原材料価格の上昇による企業への影響が懸念される。

そこで帝国データバンクは企業の価格転嫁の動向について調査を実施した。

  • 調査期間は2021年12月16日~2022年1月5日、調査対象は全国2万3,826社で、有効回答企業数は1万769社(回答率45.2%)


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調査結果


  1. 企業の64.2%で前年同月と比べ仕入単価が上昇、リーマン・ショック以来の水準に


    仕入単価が前年同月と比べて上昇した企業は64.2%と、リーマン・ショックがあった2008年9月(65.5%)以来となる水準まで上昇した。

    業種別では、鉄鋼や石油卸売が含まれる「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」の92.7%で仕入単価が上昇。さらに、「化学品製造」(83.3%)や「飲食店」(83.1%)、「機械製造」(82.0%)、「電気機械製造」(81.4%)、「建材・家具、窯業・土石製品製造」(80.3%)といった業種でも、8割超の企業で仕入単価が上昇している。

  2. 仕入単価が上昇した企業の割合

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  3. 仕入単価が上昇した企業の半数超で、販売単価への価格転嫁ができていない


    仕入単価が上昇した企業のうち、販売単価も上昇したとする企業は43.8%となった。一方で、販売単価が変わらない(47.9%)、低下した(6.3%)とする企業は合わせて54.2%となり、半数を超える企業では価格転嫁できていない状況にある。

    業種別にみると「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」では87.2%で販売単価も上昇。また、「建材・家具、窯業・土石製品製造」(52.7%)や「化学品製造」(51.1%)も半数を上回った。

    「品薄な商品の値上げが浸透してきている」(鉄鋼卸売)、「ウッドショックと称される原木価格の高騰によるコスト増は否めない。しかし、製品の引合いは好調で、製品単価の引き上げにより収益は確保できている」(合板製造)、「原材料価格の上昇は痛手も、これを理由とした製品価格の値上げが比較的受け入れられている。また需要も堅調に推移し、顧客の買い控えなどは起きていない」(石油化学系基礎製品製造)といった声があげられている。

    一方、「飲食店」(28.6%)や「飲食料品・飼料製造」(31.8%)などの飲食料品関連では、販売単価が上昇した割合は3割程度にとどまった。

    「原材料、部品価格の高騰や入手困難な状況で先行きが読めない」(電気計測器製造)、「原材料の価格高騰で採算が厳しい状態。価格改定が成功するかが問題」(水産練製品製造)「ウッドショックによる原材料の価格高騰で、顧客の動きに少し鈍りがみえる」(木造建築工事)などの声もみられる。

  4. 仕入単価が上昇した企業の販売単価(対前年同月)

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    仕入単価が上昇した割合 ~51業種別、上位25業種~

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