ロシア・ウクライナ情勢に対する企業の意識調査

ロシアの侵攻、企業の半数で業績に悪影響を見込む
~ 生活にも直撃!幅広い業界でマイナス影響広がる ~

2022年2月24日以降、ロシアによるウクライナに対する大規模な軍事行動が続いている。1カ月以上にわたる戦闘が続くなか、徐々に日本国内においても影響がみられている。先日、帝国データバンクが発表した「日本企業の“ロシア貿易”状況調査」 [1]においても、ロシアに対する貿易制裁などにより最大で約1.5万社に影響する可能性があると分析している。


国民生活に目を向けると、穀物生産国であるロシア、ウクライナともに輸出が滞れば世界的な穀物の供給不足となり、全世界で特に小麦製品などの価格上昇が引き起こされる。また、ロシア産の原油や天然ガスなどが世界で敬遠され、供給が減少することで生じる燃料価格などの上昇も懸念される。


そこで、帝国データバンクは、ロシア・ウクライナ情勢に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年3月調査とともに行った。

  • 調査期間は2022年3月17日~31日、調査対象は全国2万4,561社で、有効回答企業数は1万1,765社(回答率47.9%)
  • 本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している


ロシアとの輸出入企業と国内サプライチェーン状況

sp2022040701.jpg

調査結果

  1. 企業の50.3%で業績へマイナスの影響

    ロシア・ウクライナ情勢により自社の業績にどのような影響があるか尋ねたところ、『マイナスの影響がある』(「既にマイナスの影響がある」と「今後マイナスの影響がある」の合計)と見込む企業は50.3%と、約半数にのぼった。内訳をみると、「既にマイナスの影響がある」が21.9%、「今後マイナスの影響がある」が28.3%(小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳は必ずしも一致しない)となった。

    sp202204070201.jpg

    他方、3割近くの企業で「影響はない」(28.1%)としたほか、5社に1社は自社業績への影響について「分からない」(20.7%)としていた。


    一方で、『プラスの影響がある』(「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」の合計)と見込む企業はわずか0.9%となっている。


    一部企業からは、

    • 「小麦の消費が減り、米の消費が増えればプラスの影響になる」(米麦卸売、福井県)
    • 「ロシア製品との競合がなくなるため、自社としてはプラス要因」(一般製材、北海道)
    といった声があがっていた。


  2. ガソリンスタンドや貨物運送などで既に悪影響を受けている

    とりわけ業績へ「既にマイナスの影響がある」企業を主な業種でみると、ガソリンスタンドやプロパンガス小売などの「燃料小売」が77.6%、「石油卸売」が71.2%となった。原油や天然ガスなどに関連した業種で既に7割を超える企業で悪影響を受けていることが分かる。
    そのほか、軽油などの燃料が必要となる「一般貨物自動車運送」(48.9%)、石油由来の塗料やめっきなどの原料が高騰する「金属製品塗装等」(40.4%)が4割台。ロシア産の木材不足が生じている「木材・竹材卸売」(38.0%)、小麦などの穀物製品の価格上昇などが影響する「飲食店」(34.7%)、「総合スーパー等」(31.9%)、「農・林・水産」(31.3%)が3割台で並んだ。
    企業からも「ロシア産原油の輸入規制による燃料価格の高騰をより一層懸念している」(一般貨物自動車運送、茨城県)や「新型コロナの影響で仕入れコストが上がっているところに、さらにウクライナ危機で燃料価格・穀物価格上昇の追い討ちがかなりの速度で来ている」(養鶏、長崎県)といった意見があがっている。
    特に原油やガソリン、天然ガスといった燃料価格や穀物価格の上昇などに対して既に影響を受けている様子がうかがえる。
    また「今後マイナスの影響がある」と見込む企業は、木材不足を懸念する「木造建築工事」(41.3%)や「包装用品卸売」(40.6%)などでみられ幅広い業界へのマイナスの影響の拡大が懸念される。

    業績にマイナスの影響がある主な業種

    sp202204070301.jpg

  3. まとめ

    本調査の結果、ロシア・ウクライナ情勢に対して約半数の企業で業績にマイナスの影響があると見込んでおり、2割以上の企業で既に悪影響が広がっていた。特に価格高騰が続く燃料や食品関係といった私たちの生活にすぐに結びつく製商材・サービスを扱う業種でその影響は大きくなっている。


    また、政府は国民負担を軽減するための緊急経済対策の策定を指示するなど、対応を急いでいる。しかし、ウクライナ情勢の長期化の様相もあり、今後は企業の設備投資、国民の消費活動などが手控えられることも懸念されるだろう。


    先行き不透明感が強まるなか、企業活動の停滞や国民の消費マインドの低下が進まぬよう政府には早急な経済対策が求められている。



    [1]帝国データバンク「日本企業の「ロシア貿易」状況調査」(2022年4月6日発表)


    【内容に関する問い合わせ先 】
    株式会社帝国データバンク 情報統括部
    担当:池田 直紀
    TEL:03-5919-9343
    E-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
    リリース資料以外の集計・分析については、お問い合わせ下さい(一部有料の場合もございます)。
このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。報道目的以外の利用につきましては、著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。