ロシア・ウクライナ情勢による企業の仕入れへの影響調査

ロシア・ウクライナ情勢で50.8%が「仕入確保」に影響、66.7%が「価格」に影響
~ 問題に直面している企業の1割近くが生産拠点の国内回帰を検討 ~

ロシアのウクライナ侵攻開始から2カ月が経過、日本国内では原油や原材料価格の一段の高騰による影響の拡大が危惧されている。またロシアは日本を含む「非友好国」に対して、木材の輸出を禁止する措置を発動し、日本側でもロシアからの輸入依存度が高い単板を含む木材や機械など38品目を輸入禁止にした。 


さらに、穀物大国であるロシアは、非友好国への食料輸出を注意深く監視する考えを示すなか、日本は追加制裁としてロシア産の石油を原則禁輸する方針を表明。原材料や商品不足および価格のさらなる高騰への懸念が高まっている。

そこで、帝国データバンクは、ロシア・ウクライナ情勢による原材料や商品・サービスなどの仕入れへの影響について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年4月調査とともに行った。


  • 調査期間は2022年4月15日~30日、調査対象は全国2万4,854社で、有効回答企業数は1万1,267社(回答率45.3%)
  • 本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している


調査結果

    ロシア・ウクライナ情勢で企業の 50.8%が「仕入数量の確保難」、66.7%が「仕入価格の高騰」に直面

    ロシア・ウクライナ情勢による原材料や商品・サービスの仕入れへの影響について尋ねたところ、仕入数量の確保面で『影響を受けている』企業は50.8%と、半数を超えた。内訳をみると、「大きな影響を受けている」が3.8%、「影響を受けている」が8.9%、「少し影響を受けている」が38.1%(小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳は必ずしも一致しない)となった。

    他方、原材料や商品などの価格高騰の面で『影響を受けている』企業は66.7%と7割近くにのぼっている。内訳をみると、「大きな影響を受けている」が10.2%、「影響を受けている」が15.6%、「少し影響を受けている」が41.0%となった。


    ロシア・ウクライナ情勢で仕入れに影響を受けている企業割合

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    「木造建築工事」など木材を扱っている業種で、企業の8割超が仕入れ困難に

    ロシア・ウクライナ情勢により原材料や商品などの仕入数量の確保面で『影響を受けている』企業割合を主な業種でみると、「木造建築工事」が88.3%、「木材・竹材卸売」が83.6%、「建築工事」が81.6%と、ロシア発「ウッドショック」により、木材を扱っている業種で影響が目立っている。


    また、「水産食料品製造」はロシア産品の不足 により、7 割近くの企業がマイナスの影響を受けている。

    ロシア・ウクライナ情勢により仕入数量の確保面で影響を受けている企業割合 ~主な業種~

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    工事関連やガソリンスタンドなどが仕入価格の高騰に直面

    ロシア・ウクライナ情勢により原材料や商品などの仕入価格面で『影響を受けている』企業割合を主な業種でみると、木材価格の高騰が響いている「木造建築工事」は91.3%にのぼった。また、原油価格の高騰の直接的な影響を受けているガソリンスタンドなどの「燃料小売」(91.2%)も9割を超えた。

    ほかにも、小麦などの穀物製品、水産品などの価格上昇に直面している「飲食店」(86.6%)や軽油などの燃料が必要となる「一般貨物自動車運送」(84.7%)などは8割超の企業が仕入価格の高騰により影響を受けている。

    ロシア・ウクライナ情勢により仕入価格面で影響を受けている企業割合 ~主な業種~

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    ロシア・ウクライナ情勢により仕入れ関連問題に直面している企業の5割近くが価格転嫁を実施

    ロシア・ウクライナ情勢により原材料や商品・サービスの仕入数量の確保または価格高騰に直 面している企業に対し、実施している対策を尋ねたところ「原材料や商品価格上昇分の販売価格 への転嫁」が48.3%でトップとなっている。次いで、「代替品への切り替え」(21.3%)、「調達先 の変更(国内)」(14.9%)、「調達ルートの変更」(14.8%)などが続いた。

    すでに実施している仕入れ関連対策(複数回答)

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    企業からは、「調達ルートの変更は余儀なくされているが、燃料サーチャージが予想を上回って高騰しており、利益に響く」(靴・履物卸売)や「仕入単価の高騰に関しては自社の利益の減少にて対応、不足数量に関しては代替品および仕入先の拡大等でなんとか必要数量を確保している状況」(一般土木建築工事)などといった声が聞かれる一方、「汎用品ではないので代替品への切り替えや調達ルート・調達先の変更はほぼできない」(鉄鋼・非鉄・鉱業)にあるように、対策を実施する状況にない企業もみられた。


    ロシア・ウクライナ情勢により仕入れ関連問題に直面している企業の1割近くが生産拠点の国内回帰を検討

    ロシア・ウクライナ情勢により、原材料や商品・サービスの仕入数量の確保または価格高騰に直面 している企業に対して検討している対策を尋ねたところ「原材料や商品価格上昇分の販売価格への転 嫁」が36.1%でトップとなった。次いで、「代替品への切り替え」(25.2%)、「数量確保できない分の 価格の上乗せ」(23.5%)、「調達ルートの変更」(22.6%)、「調達先の変更(国内)」(20.2%)は2割で続いた。特に「数量確保できない分の価格の上乗せ」は前述のすでに実施している企業の割合(9.5%) よりも14.0ポイント高く、今後、対策が進むとみられる。


    また、企業の約 8%で、政府が新型コロナウイルスの感染拡大を背景に促進してきた「自社生産拠点の日本国内への回帰」および「自社生産拠点の第 3 国への分散・移転」の実施を検討している。


    企業からは、「大手や他社が中国など海外で製造していたものを、物流価格の増加や運送状況の悪化 などで、国内へ回帰している。その影響で、当社を含めた中小企業が取引している既存の国内製造業者な どへ注文が集中し、新型コロナウイルスで人員を減らしているため生産余力がなく、納期が大幅に遅れている。国内回帰の動きが激しい」(がん具・娯楽用品卸売)といった声があがっていた。


    検討している仕入れ関連対策(複数回答)

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    まとめ

    本調査の結果、ロシア・ウクライナ情勢により、仕入数量の確保面で影響を受けている企業は半数超となった。他方、3社に2社は価格高騰の面で影響を受けていた。特にロシア発「ウッドショック」は、数量・価格の両面に大きな影響を及ぼしている。こうした問題に直面している企業は5割近くで価格転嫁を実施するなどで対応していた。


    政府は 4 月 26 日に「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」で、ウクライナ情勢等の影響を受けた 事業者へのセーフティーネット貸付のさらなる金利引下げを行うと発表。また、官民の金融機関等 に対し、ウクライナ情勢などにより影響を受けている事業者の業況を把握し、事業者のニーズに応 じて細かな支援を徹底することを要請するなど、対策の強化を進めている。


    ロシア・ウクライナ情勢の長期化で先行き不透明感が強まるなか、政府には上記の対策に加え、 影響を受けているすべての企業に支援が行き渡る対策の実施が求められるとともに、企業は自社の 活動・業績への影響を最小限にするための早急な対策が急がれる。



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