SDGsに関する企業の意識調査(2022年)

SDGsに積極的な企業は5割超に
~ 取り組む企業の66.5%が具体的な効果を実感 ~

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された「2030年アジェンダ」に掲載されている世界共通の目標である。現在、SDGs達成のための「行動の10年」として進められているなか、岸田首相は2022年6月14日に開かれたSDGs推進本部の会合において、幅広い関係者間での官民連携を一層深化させることの重要性を強調し、取り組みを強化するよう閣僚に指示するなど、対応が急がれている。


そこで、帝国データバンクは、SDGsに関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年6月調査とともに行った。

  • 調査期間は2022年6月17日~30日、調査対象は全国2万5,405社で、有効回答企業数は1万1,337社(回答率44.6%)。SDGsに関する調査は、2020年6月、2021年6月に続いて今回で3回目
  • 本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している


調査結果

  1. SDGsに積極的な企業割合は5割超、前回比12.5ポイント増加

    自社におけるSDGsへの理解や取り組みについて尋ねたところ、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は23.6%となり、前回調査(2021年6月)より9.3ポイント増加した。また、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は28.6%で同 3.2ポイント増だった。合計すると『SDGsに積極的』な企業は同12.5ポイント増の52.2%となり、SDGsの達成に向けた取り組みに対する意識は前年より大きく拡大し、半数以上の企業が前向きな姿勢を示す結果となった。

    企業からは、「“やらなければいけない”という義務感よりも、小さなことでも取り組むことによって将来社会に明るい展望を地域にもたらすことができ、それが自社の存続にもつながると考えている」(印刷、富山県)との声にあるように、前向きに取り組んでいる様子がみられた。

    SDGsへの理解と取り組み

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    一方、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」(35.9%)および「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」(6.8%)は前年より減少した。合計するとSDGsを認知しつつも取り組んでいない企業は42.7%となり、前年(50.5%)より7.8ポイント減少し、『SDGsに積極的』を下回る結果となった。


    企業からは、「政府にもう少し強く先導してほしい。具体的でないとわからない人や動かない人が多いと思う」(コンビニエンスストア、福島県)や「CO2排出削減に取り組みたいが、そのための設備投資費用が大きく、なかなか手が出せない。補助金・助成金制度の拡充が必要」(米菓製造、三重県)といった政府からの支援を期待する声があげられた。


  2. SDGsに積極的な企業、大企業では7割近くとなるも、中小企業では半数に満たず

    規模別にみると、「大企業」ではSDGsに積極的な企業が68.6%で、全体を大幅に上回った。一方で、「中小企業」では48.9%、「うち小規模企業」では42.0%となり、依然として企業規模間に格差が生じている。

    中小企業からは、「零細企業における具体的な取り組み目標が思いつかない」(セメント卸売、高知県)や「中小企業には人材、資金面などのハードルが高い」(木製建具工事、北海道)などといった厳しい声があげられた。一方、「取引先のグローバル企業方針で日本だけでなくグローバルに通用するものでないと社会経済に取り残されるというのが印象に残っている」(一般貨物自動車運送、広島県)にあるように、着手はしていないが、SDGsの重要性を実感している企業もみられている。

    SDGsに積極的な企業割合 ~規模・業界別~

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    SDGsに積極的な企業を業界別にみると、『農・林・水産』が 72.6%で最も高かった。次いで、『金融』(62.3%)や『製造』(57.1%)が上位に並んでいる。企業からは、「ペーパーレス化の促進のほか、女性活躍推進などジェンダーレスに取り組んでいる」(信用金庫、茨城県)や「次世代に向けて、持続可能な地球になるよう、大量生産・大量廃棄から脱却し、リサイクルやリユースにできるところから実施している。廃棄物の分別は重要であり、分ければ資源、混ぜればゴミとなる」(SW電源等製造、徳島県)といった声が聞かれた。


  3. 現在力を入れている項目は「働きがいも経済成長も」が引き続きトップに

    SDGsでは、2030年までに達成すべき17の目標が設定されている。そこで、17目標のなかで現在力を入れている項目を尋ねたところ、働き方改革などを含む『働きがいも経済成長も』が31.4%で最も高かった(複数回答、以下同)。同目標は、社内から取り組むことができる「キャリアパスに応じた研修」や「従業員の健康保持・増進」などといった取り組み方があり、企業にとって取り組みやすい目標であると考えられる。

    次いで、リサイクル活動やエコ商品の生産・使用などを含む『つくる責任つかう責任』(22.9%)、再生可能エネルギーの利用などを含む『エネルギーをみんなにそしてクリーンに』(22.5%)、およびCO2排出量の少ない原材料の使用などを含む『気候変動に具体的な対策を』が2割台で続いた。

    SDGs17目標のうち、現在力を入れている項目(複数回答)

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  4. 今後最も力を入れたい項目も「働きがいも経済成長も」が首位

    SDGsの17目標のうち、今後最も取り組みたい項目について尋ねたところ、「働きがいも経済成長も」が 12.6%でトップだった(単一回答)。現在最も力を入れている項目と同様に最も高く、全項目のなかで唯一1割を超えた。次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(8.3%)や、「気候変動に具体的な対策を」(7.5%)が上位に並んだ。

    SDGs17目標のうち、今後最も取り組みたい項目

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  5. 企業の66.5%がSDGsへの取り組みによる効果を実感、「企業イメージの向上」がトップ

    現在SDGs各目標に力を入れている企業にSDGsへの取り組みによる効果を尋ねたところ、「企業イメージの向上」が37.2%でトップとなった(複数回答、以下同)。また、人材の定着率の向上につながり得る「従業員のモチベーションの向上」(31.4%)も3割台となり、企業の見られ方に関する効果が上位に並んでいる。次いで「経営方針等の明確化」(17.8%)、「採用活動におけるプラスの効果」(14.0%)、「取引の拡大(新規開拓含む)」(12.3%)が続いた。

    また、SDGsへの取り組みが「売り上げの増加」につながった企業は11.1%となった。単なる慈善活動だと思われがちなSDGsをビジネスチャンスとして捉え、実際に売り上げの向上につなげた企業も出てきているもようである。


    総じて、SDGsの効果を実感している企業は66.5%となった。企業からは、「SDGsはビジネスになることに関する理解が高まったと思う。今後も売り上げ増が見込めるのであれば環境にやさしい素材を販売していきたい。ただし、商品によっては価格が一番大事で高価格商品は相手にしない企業も多い」(織物卸売、大阪府)や「取り組む過程でいろいろな企業、団体とかかわることが多く社員のモチベーションがだいぶ上がった。自社の取り組みに対して自信が持てるようになったようだ」(産業用機械器具賃貸、愛知県)などといった声があげられている。


    一方で、「まだ効果はみられない」企業は19.6%となった。


    SDGsへの取り組みによる効果(複数回答)

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    企業の声

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    まとめ
    本調査ではSDGsに積極的な企業は前年から大幅に上昇し、5割超となった。なかでも、現在力を入れているおよび今後取り組みたいSDGsの目標では、いずれも『働きがいも経済成長も』がトップとなった。


    また、取り組むことによる効果は、「企業イメージの向上」が4割近くでトップ。次いで、「従業員のモチベーションの向上」も3割で続き、「採用活動におけるプラス効果」も上位5項目に入るなど、非財務情報としての企業価値の向上に関する効果が目立った。他方、1割超の企業が「売り上げの増加」をあげており、社会課題の解決と事業の成長は実際に両立できるといった事例がでてきている。総じて、企業の66.5%が取り組みによる効果を実感している結果となった。


    このように、SDGsの達成に向けた企業の取り組みは単なる社会課題解決に向けた貢献だけでなく、企業価値の向上やビジネスチャンスの獲得にもつながる。また、SDGsを通じて社会の課題を認知し、対応することで経営リスクの回避につながり、企業の持続可能な成長を実現する効果も期待できる。


    しかし、SDGsについて、“どのように対応すれば良いか分からない”や“目標が大きすぎて自社でできることはない”、“費用面・人材面での余裕がない”などといった声も聞かれ、課題は依然として多く残っている。


    企業はSDGsに新たに取り組むだけでなく、まず既に行っている自社の活動がSDGsのいずれに該当するかどうかを確認することも大切だと考えられる。また、産学官民が一体となって、SDGsの取り組み事例などの情報発信、および補助金制度の実施など費用面における支援の促進を行うことも肝要となろう。



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