2023年の景気見通しに対する企業の意識調査

2023年の景気、悪化を見込む企業が25.3%へ倍増
~ 「原料高」対策と「個人消費」復活への政策がカギ ~

TDB景気動向調査(2022年11月)の景気DIは4カ月連続で改善。依然として新型コロナウイルスの影響が続いているものの、全国旅行支援をはじめとする各種経済政策などが奏功し、国内景気は緩やかに持ち直しがみられている。


しかし一方で、長期化する原材料価格の高騰など懸念材料も多く、国内企業物価指数(2022年11月速報)は前年比9.3%上昇と高水準の伸びが続いている。食料品[1]や生活必需品などの相次ぐ値上げだけでなく、さらなる家計への悪影響も懸念される。


そこで、帝国データバンクは、2023年の景気見通しに対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年11月調査とともに行った。
  • 調査期間は2022年11月16日~30日、調査対象は全国2万6,953社で、有効回答企業数は1万1,510社(回答率42.7%)
  1. 2023年の景気見通し、「悪化」と見込む企業25.3%と4社に1社が占める

    2023年の景気見通しについて尋ねたところ、「回復」局面になると見込む企業は2022年の景気見通し(2021年11月実施)から10.8ポイント減の11.5%となった。また、「踊り場」局面は39.1%と2022年見通し(40.9%)より若干減少した。


    また「悪化」局面を見込む企業は、同12.7ポイント増の25.3%と4社に1社となった。企業からは「電気代、燃料代の高騰が続くようであれば、製品価格の大幅な値上げは避けられない。しかし原価上昇分のすべてを価格に反映できるわけでもないので、収益性は悪化する一方だろう」(舗装材料製造、群馬県)や、「今後も景気が好転する材料がなく、依然として先行き不透明な見通しである。新型コロナ、ウクライナ危機、円安対策など、大きな社会不安が払しょくされれば好転していくように感じるが、それには相当な時間が必要」(食肉小売、東京都)といった厳しい声があがっている。


    景気見通しの推移

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  2. 2023年の景気の懸念材料、「原油・素材価格の上昇」が72.7%と突出して高い

    2023年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を尋ねたところ、「原油・素材価格(の上昇)」が72.7%(前年比9.8ポイント減)で突出して高かった(複数回答3つまで、以下同)。

    次いで、「為替(円安)」(43.5%、同24.6ポイント増)や「物価上昇(インフレ)」(33.3%、同15.9ポイント増)が前年より急増した。そのほか「人手不足」(26.1%、同4.5ポイント減)やロシア・ウクライナ問題、東アジア情勢など「地政学的リスク」(18.5%、-)が上位に並んだ。


    また、2021年見通しは5割以上、2022年見通しでは4割近くの企業が懸念材料にあげていた新型コロナウイルスなどを含む「感染症による影響の拡大」は、15.4%と大幅に減少した。しかしながら懸念材料の6位にランクされ、2023年も少なからず新型コロナによる影響を受けると見込んでいる様子もうかがえた。


    さらに、2023年10月から制度が開始される「インボイス制度」についても12.3%の企業で懸念材料と見込んでいる。

    2023年の懸念材料(上位10項目、3つまでの複数回答)

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    【企業からのコメント(抜粋)】
    • 原材料の値上げ・電気料金の引き上げで、値上げに踏み切ったものの、販売額は徐々に減少傾向にある。電気料金のさらなる引き上げも見込まれることから、製品の再値上げということになれば、景気はますます悪化するものと予想する(水産食料品製造、茨城県)
    • 人手不足の解消策はなく、社員の高齢化が進んでおり、仕事はあるが受注できない状況に拍車がかかる。人が減っているが、残業時間の上限規制もあり、さらに人手が足りなくなっている。景気が良くなることはない(塗装工事、山梨県)
    • 新型コロナはある程度落ち着きをみせてきたが、その影響が全くなくなったわけでない。加えて、値上げラッシュによる消費の冷え込み、インボイス制度の導入による中小企業への打撃、年金の受給減など影響がある(個人教授所、大阪府)


  3. 景気回復に必要な政策、「原材料不足・価格高騰」対策がトップ、「個人消費」の復活もカギ

    今後、景気が回復するために必要な政策を尋ねたところ、企業の7割超が2023年の懸念材料とした「原材料不足や価格高騰への対策」が41.7%でトップとなった(複数回答、以下同)。

    以下、補助金・給付金などの「中小企業向け支援策の拡充」(35.3%)や新型コロナウイルスなどを含む「感染症の収束」(34.8%)、「個人消費の拡大策」(32.1%)が3割台で並んだ。さらに、「個人向け減税」(29.5%)や「人手不足の解消」(28.7%)、個人向け手当の創設など「所得の増加」(27.3%)が続いた。


    「原材料不足・価格高騰」に対する政策が最重視されているなか、個人消費に関連する政策が上位に並んでいる。


    企業からも「個人消費の増加が第一歩と考えている。消費意欲の向上が図られない限り給付や所得を増やしても出し渋り、経済に回るキャッシュ増加が思うように見込めない可能性がある。短期的でも良いので、個人に係る税の軽減や一時的な消費税廃止、生活必需品価格に対する補助などを行い、消費型社会を構築することが長期的な景気改善に繋がるのではないかと考える」(土木工事、北海道)といった声もある。

    今後の景気回復に必要な政策(上位10項目、複数回答)

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  4. まとめ

    2022年がまもなく終わろうとしている。今年の景気は、新型コロナウイルスの影響に加え、急激な円安にともなう原油・原材料価格の高騰に大きく影響された1年となった。


    本調査の結果より、2023年の景気は「悪化」局面と見込む企業が25.3%と前年から倍増した。特に懸念材料として「原油・素材価格(の上昇)」が突出して高くなったほか、「為替(円安)」や「物価上昇(インフレ)」をあげる企業が多かった。多くの企業では、これまでの新型コロナウイルスの感染拡大による需要減少への対応から、徐々に「原材料不足・価格高騰」を筆頭にした、その他諸問題への対応にシフトしていくとみられる。


    また、景気回復に必要な政策では「原材料不足や価格高騰への対策」がトップとなり、さらに、個人消費の回復に資する政策を求める声も多い。2023年は「原材料不足・価格高騰」への対応だけでなく、「個人消費」の復活に向けた政策がカギとなろう。


    引き続き企業にとっては、人手不足が続くなか原材料価格の高騰が重くのしかかり、政府には地政学的リスクも含め早急な対策が求められている。そして同時に、消費拡大に向けた個人の所得増加に資する政策も重要と言えそうだ。


    [1]帝国データバンク「“食品主要105社”価格改定動向調査(12月)」(2022年12月1日発表)



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