社内外会議に関する企業の実態調査

アフターコロナ、社内会議は61.8%が「対面」に
社外との会議は「対面・オンライン」混在が5割超える

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染対策として「非接触・非対面」の動きやテレワークの実施などを機にオンライン会議が急速に普及した。帝国データバンクが2021年9月に実施した調査[1]によると、新型コロナ拡大をきっかけに取り組みを開始した働き方として、「オンライン会議の導入」が49.4%と5割近くにのぼった。


2023年3月には新型コロナの感染者数が全国的に抑制されてマスク着用が個人の判断に委ねられ、5月には感染症法上の位置づけが「5類」へ移行される予定である。コロナ禍で定着したオンライン会議がどのように変化していくかが注目される。


そこで、帝国データバンクは、社内外会議に関する企業の実態について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2023年3月調査とともに行った。


  • 調査期間は2023年3月17日~3月31日、調査対象は全国2万7,628社で、有効回答企業数は1万1,428社(回答率41.4%)
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  1. 『社内会議』は対面が主流の一方、『社外との会議』はハイブリッドで実施する企業が半数に

    『社内会議』の実施方法について尋ねたところ、「主に対面で実施」と回答した企業は61.8%で最も多かった。「主にハイブリッド[2]で実施」が26.3%で続き、「主にオンラインで実施」は6.3%だった。


    一方、『社外との会議』については、「主にハイブリッドで実施」が50.2%で最も多くなり、『社内会議』より23.9ポイントも高くなった。「主に対面で実施」は26.8%となり、『社内会議』を35.0ポイント下回っている。また、「主にオンラインで実施」は14.8%と『社内会議』より8.5ポイント高く、『オンライン会議を積極的に導入』(「主にハイブリッドで実施」「主にオンラインで実施」の合計)の割合は65.0%にのぼった。

    社内外会議の実施方法

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  2. 企業規模が大きいほどオンライン会議を積極的に取り入れる割合高く

    『社内会議』の実施方法について企業規模別にみると、「主に対面で実施」では「大企業」が35.3%、「中小企業」が66.7%、「うち小規模企業」が75.0%と企業規模が小さくなるほど対面での会議の実施割合が高かった。一方、「主にハイブリッドで実施」や「主にオンラインで実施」は企業規模が大きいほど割合が高く、「大企業」においては「主にハイブリッドで実施」(53.6%)が半数を超えた。従業員数別でも同様の傾向がみられ、規模の大きさや従業員数の多さなどといった性質が社内でのオンライン会議のメリットを比較的受けやすくすると考えられる。


    『社外との会議』をみると、『社内会議』と同様に企業規模が大きくなるほどオンライン会議を実施する企業の割合が高かった。ただし、中小企業でも「主にハイブリッドで実施」は48.0%と5割近くを占め、「主にオンラインで実施」(14.7%)と合わせると、『社外との会議』について『オンライン会議を積極的に導入』の割合は62.7%にのぼることが示された。


    社内外会議の実施方法 ~企業規模・従業員数別~

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  3. 業界別、『金融業』『サービス業』でオンライン会議に積極的、特に「情報サービス」が目立つ

    『社内会議』の実施方法について業界別にみると、業務上現場での作業が多い『農・林・水産』や『建設』では「主に対面で実施」の割合が比較的高く、「主にハイブリッドで実施」および「主にオンラインで実施」の割合は低かった。一方で、『金融』や『サービス』では『オンライン会議を積極的に導入』する割合が相対的に高かった。


    『社外との会議』については『社内会議』と同様に『金融』や『サービス』における『オンライン会議を積極的に導入』企業割合が比較的高かった。

    社内外会議の実施方法 ~業界別~

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    さらに、社内外会議について『オンライン会議を積極的に導入』と回答した企業を業種別にみると、ソフト受託開発を含む「情報サービス」(社内68.0%、社外90.7%)は社内・社外ともに回答企業全体(同32.6%、同65.0%)を25ポイント以上上回った。また、「人材派遣・紹介」(社内46.6%、社外83.0%)や「広告関連」(同40.7%、同78.8%)も目立った。


  4. 『南関東』および『近畿』といった大都市でオンライン会議に積極的

    社内外会議について『オンライン会議を積極的に導入』と回答した企業を地域別にみると、『社内会議』では、東京都を含む『南関東』は42.1%と全体(32.6%)を10ポイント近く上回った。また、『近畿』(35.5%)は3割超となった。『社外との会議』においては、『南関東』(69.2%)のみ全体を上回った。テレワークなど在宅勤務の実施割合が比較的高い大都市においてオンライン会議がより活用される傾向が示された。

    『オンライン会議を積極的に導入』企業割合 ~地域別~

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  5. まとめ

    本調査の結果、『社内会議』の実施方法について、「主に対面で実施」企業の割合が6割超でトップとなった。一方、『社外との会議』は「主にハイブリッド」が半数超で最も高くなった。企業規模が大きいほどオンライン会議を積極的に取り入れる割合が高く、地域別では特に『南関東』および『近畿』といった大都市でオンライン会議に積極的である企業割合が比較的高かった。

    なお、移動時間の削減などの理由でオンライン会議を実施する企業が一定数みられた。他方、対面・オンライン会議それぞれに一長一短があることを指摘する声もあった。


    オンライン会議は、通信環境に左右される点や、参加者の表情・雰囲気が読み取りにくい、話し手の熱意や有形製品等の魅力が伝わりにくいなどといったデメリットが指摘される。一方で、感染対策は無論、移動時間の短縮などによる生産性の向上やコスト削減といったメリットに加え、事業を継続するうえで脅威となる災害の発生などさまざまなリスクによる被害の低減、いわゆる「BCP(事業継続計画)対策」効果も期待できる。不確実性が高い今の時代に、企業がリスクを抑えながら円滑に営業活動を行い、業績を伸ばしていくための一つの手段として、場面や状況に合わせて対面・オンライン形式での会議を上手く使い分けられるようになるであろう。


    今後の動向について、企業からは特に『社外との会議』においてハイブリッドでの実施を継続するとの声が複数あがった一方、新型コロナ「5類」移行などの動きにより、対面形式の会議が徐々に復活する可能性も示されており、ビジネスパーソンの移動や出張の機会は増加してくるであろう。


    <参考>テレワークと社内オンライン会議導入の関係

    オンライン会議の導入は非接触・非対面による感染症の予防効果のみならず、近年普及しつつあるテレワークにおいても必要不可欠であると言える。

    そこで帝国データバンクの調査[3]結果から算出した「テレワークなどリモート設備の導入」に取り組んでいる企業割合と社内会議について『オンライン会議を積極的に導入』企業割合の関係を主な業種別にみると、テレワークなどの導入割合が1ポイント上昇すると積極的にオンラインで社内会議を導入する企業の割合が0.6ポイント上昇するという傾向が表れていた。[4]特に「情報サービス」では両項目とも突出して高水準だった。

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    【企業からの主な声(社内または社外との会議を「主に対面」で実施)】
    • オンライン対応には限界がある。特に新規顧客への対応は無理と考える(貸事務所、埼玉県)
    • 国によるマスク着用ルールが緩和された3月13日以降の会議は、対面になった。ただマスク着用の人が多い(鉄スクラップ卸売、大阪府)
    • 対面での商談は親密な人間関係作りにプラスになる(食料・飲料卸売、大阪府)
    • 直接の訪問機会が増え、商談が活発に行えるので、顧客との意思の疎通が楽になり、ひいては業績向上の期待が高まる(石油卸売、栃木県)
    • 基本的には新型コロナ前の全面対面式での会議や打ち合わせに戻っている。ただ、お付き合いなど飲食は40%ほど少なくなった(木造建築工事、栃木県)
    • 仕入れ先である大企業との関係においては、出張者の増加や対面での会議が増えると考える(和洋紙卸売、富山県)
    • 新型コロナの影響で客先とのオンライン会議が増えたが、実際に商談を進めるうえでは対面による生の声を聴き取り進めることの重要性を再認識した(土木建築サービス、東京都)

    【企業からの主な声(社内または社外との会議を「主にハイブリッド」または「主にオンライン」で実施)】
    • 社内外とオンラインで会議ができるようになったことは、新型コロナ蔓延の産物のうちきわめて数少ない良いことであった(金属プレス製品製造、埼玉県)
    • 「5類」への移行後も、感染による重症化リスクや後遺症リスクはあるため、いわゆる「三密回避」や、オンラインによる会議、リモートワークは今後も必要であり、新型コロナとともに経済活動を行う経営姿勢が望まれる(ガソリンスタンド、東京都)
    • 社内でのデジタル化や効率化が進んだことは間違いない。すでに社内会議や客先との打ち合わせなどがWEBで常態化したことにより移動費や時間の削減には大きくつながった(貸事務所、愛知県)
    • 職場が工場であり、社内会議は基本対面になるが、社外会議はオンラインをメインにした。今後「5類」に移行しても大きくは変わらない(野菜果実缶詰等製造、山形県)
    • オンライン会議は移動時間の短縮や効率化という面においては圧倒的に便利。一方で、営業する際に先方に熱量が伝わりづらいなどという側面もある。この一長一短は多くの人の間で感じている内容になるので、「5類」移行後もハイブリッド形式が主流になると思う(製缶板金、京都府)
    • 情報共有や確認は今後もオンラインで進めるが、人の管理(感情面・体調面など社内外問わず)に関しては、対面での対応が重要な部分が存在する(専門サービス、長崎県)
    • 荷主に対する対面での営業は増えるが、オンラインで処理できる会議や打ち合わせは今後もオンライン形式で行う。そのため出張経費や交際費は新型コロナ前の2019年レベルにはならない(一般貨物自動車運送、岩手県)
    • 対面での会議は増えると思うが、ウェブ会議はなくならないだろう。双方に異なったメリットがある(獣医、広島県)
    • ラベル印刷業のため文字や金額など商談においてはオンラインでも可能だが、最終的な仕上がりの部分では、現物判断となるため対面での実施となる(紙製品卸売、栃木県)
    • オンラインによる情報共有・対応の利便性に気付いた3年間ではあったが、「5類」移行による対面要望の場面が増えつつある(専門サービス、長崎県)



    [1]帝国データバンク「働き方改革の取り組みに関する企業の意識調査」(2021年10月21日発表)
    [2]ハイブリッドは、同一会議のなかで対面とオンラインが混在して行う方法を指すこととして尋ねた
    [3]帝国データバンク「DX推進に関する企業の意識調査」(2022年1月19日発表)
    [4]社内オンライン会議を積極的に導入企業割合を被説明変数、テレワークなどリモート設備の導入企業割合を説明変数として単回帰分析を行ったところ、以下の結果が得られた。
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