人手不足の解消に向けて、今以上のチャンスはない

2020年は新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の動向に左右された1年であった。同年4月には緊急事態宣言が発出され5月末に解除されるに至るまで、国内経済は深刻な打撃を受けた。2021年となった今も、新型コロナへの対応が企業にとって喫緊であることは言うまでもない。


そのようななか、2020年は人手不足に対する注目が薄らいだ1年でもあった。マスメディアで「人手不足」という言葉が用いられた件数をみると、2013年から急激に増加し続けた件数は2020年に大きく減少している。新型コロナの影響で企業活動が制約され業務量が縮小したことで2019年まで5割超の企業が抱えていた人手不足感は大幅に低下した[1]。そうした背景もあり、現在は社会の関心からやや遠ざかっているかもしれない。一方で、厚生労働省から毎週発表されている新型コロナの影響による解雇やその見込みがある労働者数は、雇用の不安定さを映し出しており今後も注目されるところである。


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では、実際に人手不足は薄らいだのだろうか。日本全体で考えた際に、決してそうとはいえないだろう。現在の人手不足割合の減少は先に述べた理由が主因と考えられ、人手不足の解消に欠かせない生産性の向上などを果たした根本的な解決とは言い難い。つまり、現在は「一時的に人手不足から遠ざかっている状態」であり、この先に新型コロナが落ち着いて業務量が回復するなかで、このままだと再び人手不足時代に戻ってしまう可能性は十分にある。


改めて2019年までの人手不足の動きを整理すると、元来人手不足は企業活動に深刻な影響を及ぼす要因の筆頭だった。2019年帝国データバンクが実施した調査によると、企業業績の下振れ要因では「人手不足の深刻化」が最も多くあげられ[2]、景気回復に必要な政策では「人手不足の解消」が2年連続でトップ[3]となったことが、いかに人手不足が経営者の頭を悩ませているかを裏付けている。今後新型コロナが収束に向かったとき、以上の背景は将来的な景気回復にとって大きな支障をきたしかねない。新型コロナが落ち着いて景況感が上向いたとしても、人手不足が業績拡大にとって阻害要因となれば、国内全体の成長にも悪影響だ。


そこで、人手不足を解消するチャンスこそ今ではないだろうか。今はまさに、今後のニューノーマルをつくり上げる段階である。既存業務のブラッシュアップも必要となろう。マンパワーの増加は今後も見込みにくいなか、このような状況だからこそ業務の刷新や生産性の向上に向き合えるチャンスである。時流に乗りこれからデジタル化を加速させるのも一つの手段だ。


もちろん、新型コロナへの対応などの取り組みは非常に大切であり欠かせない。ただし、加えて先を見据えながら行動できるかが、訪れる景気回復の波に乗れるかを左右するであろう。今はまさにその分岐点である。




[1] 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2020年10月)」2020年11月24日発表
[2] 帝国データバンク「2019年度の業績見通しに関する企業の意識調査」2019年4月11日発表
[3] 帝国データバンク「2020年の景気見通しに対する企業の意識調査」2019年12月12日発表

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